. ページ12
.
…よし、描けた。
タブレットの上に完成した絵を見ながら、ペンを持った右手をくるくるとゆっくり回して、感覚を確認する。
痛みもないし、これはもう大丈夫そうだ。
明日あたりから本格的に仕事も再開しようかな、なんて。
『深澤さん、できました』
深「お、まじ?見して」
そう彼を呼べば、ソファーから起き上がってゴソゴソとやってくる。
深「佐久間ぁ、ちょっと椅子ひいてくんね?」
佐「……」
深「佐久間?」
佐「……」
どうしたんだろう?
固まって全然反応のない佐久間さんに、深澤さんも首を傾げる。
『…佐久間さん?』
佐「…っ、え?」
私の声にやっと反応を示した佐久間さんは、驚いたように私たちを見た。
まるで今の今まで呼ばれていることに気づかなかったように。
…さっきもジッとこっちを見てたりしたけど、なんかあったのかな?
異変に気づいたらしい渡辺さんも、ソファーの向こうから様子を伺ってる。
深「おまえ俺の時は反応しないのになんでAちゃんだと反応すんだよ、」
ふかざぁさん泣いちゃうよ?とへらりと笑ってる深澤さんに、いつもだったら何か面白おかしく返すであろうこの場面でも、彼は黙ったままだ。
その表情は普段の可愛らしい感じとは少し違って、なんていうか、違和感。
そしてそんな彼を見つめていれば、不意にその瞳と視線がぶつかった。
一瞬ひどく動揺したように揺れた瞳。
が、それもコンマ数秒後にはフッと逸らされてしまう。
…あれ。いま、意図的に逸らされた?
やっぱり変だ。普段ならあんな逸らし方されないのに。…渡辺さんにはしょっちゅうされるけども。
私から視線を逸らしてすぐ、佐久間さんの表情がまた少し変わった。
佐「あはは、ごめん。いやー、ちょっと考え事してたわ、」
いつもの声色に戻ってそう言うと彼は頰を掻いて笑う。
佐「んでなんだっけ?」
深「え?あー、椅子、引いてくんね?って」
佐「はいよー、ってか待って。描けたの?見して、うわ、すげー!」
…考え事、
仕事のこと、とかだろうか。
浮かんだ疑問は、すっかりいつもの調子に戻った様子の彼の姿に消えた。
.
4251人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩花(プロフ) - 初めまして!私は渡辺派なので少しでも絡みのある回を見ると勝手に微笑んでしまってます笑 続編楽しみにしてます! (2023年4月10日 0時) (レス) id: 7fda05ffd5 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - 咲里以さん» ジリジリすぎて大丈夫かな?と思っていたので、そのように言っていただけて安心しました、!ありがとうございます、頑張ります! (2022年6月29日 17時) (レス) id: 1ae247aadb (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - ここあさん» 更新遅くて申し訳ないです、、そう言っていただけて嬉しいです、! (2022年6月29日 17時) (レス) @page36 id: 1ae247aadb (このIDを非表示/違反報告)
咲里以 - 初めまして!ジリジリ進んでるような違うような…ムズムズきゅんしています。続き楽しみにしているので、主様の無理ない範囲で更新待っています! (2022年4月13日 2時) (レス) @page34 id: d6172fab00 (このIDを非表示/違反報告)
ここあ - 続きがすごく見たくなりました!! (2022年4月1日 2時) (レス) id: 5e0c35ed0e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:こゆき | 作成日時:2020年12月1日 20時