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佐「………あー、えっと、」
ぴんっと変に跳ねた寝癖のまま、ちょっと気まずそうに佐久間さんが頰を掻いた。
その頰にはソファーの布の模様の跡がくっきり付いてちょっと赤くなってる。
佐「俺はね普通に起きようと思ったんだけど、翔太が」
渡「は?俺?」
佐「だって翔太が止めたんじゃん、今は行くなって」
渡「それは、…なんか大事な話してるっぽかったから、」
気を遣ってくれたってことか。
それはなんか申し訳ないな、
視線を2人の方に向ければ、偶然渡辺さんと目があった。ふいっとすぐに逸らされたけど。
『…朝食、もうできてるんで食べますか?』
佐「食べるー!!」
渡「…先に顔洗ってくる」
佐「あ、まって。俺も!」
そう言うと二階に上がっていったふたり。
2人の分の朝食の用意をしようと席を立とうとしたら、「Aちゃん、」と深澤さんの声がそれを止めた。
深「俺ちゃんと考えとくからね、約束。」
"ーーーじゃあ私がしんどくなったら癒してくれるって約束してくれますか?"
"ーーーうん、いいよ。"
『…覚えてたんですね、それ』
深「いくら俺がAちゃんより歳取ってるからって、28じゃまださすがに先週自分が言った事くらいは覚えてるよ。」
『いやそういう意味じゃなくて、』
深「あれ、違うの?今のAちゃんの言い方だとそう聞こえたけど」
『そんなこと思ってません!』
そう言えば、フォークでサラダをぶっ刺しながら彼は眼鏡の奥の目を細めて笑う。…あ。その笑い方、なんか企んでる時の笑い方だ。
『……もしかしてまたなんか揶揄おうとしてますか?』
深「うん、いま揶揄うポイント探してたところ。」
『…はぁ』
深「えー、ため息?おじさん悲しーんだけど、」
『おじさんではないじゃないですか』
深「あぁ、おにーさんだっけ。忘れてたわ、自分の設定。」
ふは、と軽い声を上げて深澤さんはフォークに刺さった野菜を口に入れてむしゃむしゃしはじめた。
そんな彼に苦笑いして、私は今度こそ立ち上がって後からやってくるであろう2人の分のパンをトースターに入れる。
時刻はもうすぐ午前10時。
お兄ちゃんに失恋してから最初の一日は、そんな感じでゆっくりと始まったのだった。
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こゆき(プロフ) - 彩花さん» 気がつきませんでした…!教えてくださってありがとうございます!とても助かりました…!! (2020年12月23日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - れいさん» ありがとうございます…!これからも楽しんでいただけるように更新頑張ろうと思います…! (2020年12月23日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - べぺさん» コメントくださっていたのに気づかなくてごめんなさい…!待っていてくださる方がいるというお言葉で、更新頑張れそうです!ありがとうございます…! (2020年12月23日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - 何度もすみません!今日もう一度読み返してたら13ページ目のタイミングがタイミグになってました、!余計なお世話だったらすみません! (2020年12月22日 14時) (レス) id: 7fda05ffd5 (このIDを非表示/違反報告)
れい - なんとなーく更新待ってました…!再開してくれて本当に嬉しいです!これからも楽しんでいきます!! (2020年12月4日 1時) (レス) id: c0a052e646 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こゆき | 作成日時:2020年7月28日 15時