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阿「電話も出ないしメッセージも既読無視だし、」
苦しいくらい私を抱きしめたお兄ちゃんは、「こんなの初めてだったから本当に心配した」と少し震えた声を出す。
その声で、小学生くらいの頃一度だけ家出をした時のことを思い出した。
塾のテストの成績が悪くて父に怒られて、家を飛び出して逃げた遠くの公園で。
私を探しに来たお兄ちゃんが、ちょうど今と同じように私を抱きしめてこんな声を出していたなって。
あの頃は私だけのお兄ちゃんだったけど。今はもう違う。
私の鼻腔を掠めた香りが、甘くて、私の知らない匂いで。それで気づいた。もうこの人は私の知ってるお兄ちゃんじゃないんだって。
それを頭が受け入れた瞬間、ぽっかり、穴が空いた。私の中のお兄ちゃんの記憶ごと抜け落ちるみたいに。
『…ごめんなさい、』
私はぐいっとお兄ちゃんの身体を押した。私の知らないその香りを嗅ぐのがあまりにも辛かったのと、…あとはなんか違うってなったから。
自分でもなんでそうしたのかわからないけど、いま私は確実に、自分からお兄ちゃんを遠ざけた。
お兄ちゃんは特にそれは気にしていないように、この連絡を取らなかった空白の期間になにをしていたのかとか、今どこに住んでるのかとかを聞いてきて。私はそれに時々回答をはぐらかしながらも答えていた。
そしたらそれまで私の横でぼーっと突っ立っていた蓮が、突然「あ、」って声を上げて。
「亮平くん、そろそろ…あ、」
蓮の声に誘導されるように視線を向けた、お兄ちゃんの後ろに見えた人影。
その人は私と蓮を視界に入れると小さく頭を下げた。
「もしかして、亮平くんの妹さん？」
阿「そう、俺の妹。」
その人の方に振り向いたお兄ちゃんは、ふんわり笑って、それから私を見て口を開いた。
阿「A、彼女が俺の奥さん、」
"奥さん"
その響きは私には毒だ。
「はじめまして。」
私を見てそう微笑んだ彼女は写真で見たより何倍も、綺麗で優しそうで。それから今日はなんだか幸せそう。
やっと会えたって嬉しそうに笑うから、私はなんか複雑な気持ちになって、少し視線を落とす。
彼女は何も知らない。私がお兄ちゃんに普通じゃない想いを抱えていること。
だからそんな風に私に向かって微笑みを向けられるんだ。
…私は彼女に向かってそんな風に笑えないや。
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こゆき(プロフ) - 彩花さん» 気がつきませんでした…！教えてくださってありがとうございます！とても助かりました…！！ (2020年12月23日 0時) (
レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - れいさん» ありがとうございます…！これからも楽しんでいただけるように更新頑張ろうと思います…！ (2020年12月23日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - べぺさん» コメントくださっていたのに気づかなくてごめんなさい…！待っていてくださる方がいるというお言葉で、更新頑張れそうです！ありがとうございます…！ (2020年12月23日 0時) (レス) id: 7e9ebf3478 (このIDを非表示/違反報告)
彩花(プロフ) - 何度もすみません！今日もう一度読み返してたら13ページ目のタイミングがタイミグになってました、！余計なお世話だったらすみません！ (2020年12月22日 14時) (レス) id: 7fda05ffd5 (このIDを非表示/違反報告)
れい - なんとなーく更新待ってました…！再開してくれて本当に嬉しいです！これからも楽しんでいきます！！ (2020年12月4日 1時) (レス) id: c0a052e646 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こゆき
| 作成日時：2020年7月28日 15時
