しぇあはうすの住人。

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ガタンゴトンと揺れる電車に乗りながら、私は蓮から受け取った白い封筒を見つめていた。

日曜の夕方だから、電車の中には人はまばらにしかいなくて。静かな車内で、はあっという私の溜息は案外大きく聞こえた。




お兄ちゃんへの普通ではない感情に気づいたのはいったいいつだっただろうか。



私の家は世間で言う所謂お金持ちとかいうやつで。

家族は私とお兄ちゃんと、それから有名な会社の社長をしている父親の3人。

母親は、私がまだ幼い頃に病気でこの世を去った。
正直彼女の記憶はあまり残っていないけど、優しい人だったのは覚えている。



お兄ちゃんは全てにおいて完璧な人だ。
優しくて、昔から頭も良くて、今は父親の会社でかなりの地位について真面目に働いている。

そんな兄に私はずっと憧れていた。

だけどいつからか、ただの憧れだったはずの私の兄への感情は、同級生の女の子達が男の子に向けるような、そんな恋愛的な感情に変わった。





私は兄と違って本当に頭が悪くて、そのせいで中学受験には失敗して、公立中学に通って。中学でも一生懸命勉強したけど、高校受験も志望校には落ちて全く無名の高校に通った。


母親とは正反対で、厳しくて、全てが完璧でないといられない父親は、兄と違って出来の悪かったそんな私に対して、ものすごく冷たく当たった。


滅多に家に帰ってこないくせに、帰ってきては私に向かって「なんでそんなこともできないんだ」「お前は出来損ないだ」の繰り返し。

正直精神はボロボロだったけど、そんな私をずっと側で守って、支えてくれていたのが、お兄ちゃんだった。



"お兄ちゃんはずっとAの味方だから。"


私が父に責められて部屋で1人泣いているのを、毎回慰めに来ては、そう言ってくれた。

大丈夫だよ。と何度も言ってくれた。


毎度毎度、私はお兄ちゃんと比べられて、心ない言葉で責められていたけど、兄に対しては全く嫌な感情はなかった。

だってその通りだったから。お兄ちゃんは本当に凄い人だったから。頭が良くて人のことを想えて、優しくて。だからこそ大好きだったんだ。


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