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ファミレスを出た俺とAちゃんは、家までの道を2人で歩く。
昨日の夜の雨のせいか地面にできていた水溜りをぴょんっと飛び越えればAちゃんが俺の後ろから笑い声を漏らした。
「なんか、佐久間さんって子供みたいですね。」
『え!俺こどもみたい?』
「今みたいなの、28歳とは思えないです笑」
そう言って笑う彼女は、昨日初めて会った時から思ってたけどちょっと22歳にしてはどこか大人っぽい雰囲気がある。
なんていうのかなぁ、なんか心に大きなものを抱えてそうだし、色々悟ってる感じがするんだよね。
俺、空気感とかそういうのにちょっと鋭いからなんとなく感じてしまう。あえて聞きはしないけど、何かあるんだろうなって。
「でもそのおかげで、なんか佐久間さんと一緒にいると変に緊張しなくて話しやすいです。」
『えー、それ喜んで良いのかな、』
「はい、ここ喜ぶところです。」
クスリと笑ったAちゃん。
その笑顔は22歳の女の子って感じなんだけどなぁ。
彼女が俺に、その心のうちに抱えるものを分けてくれるようになるにはあとどれくらいの時間がかかるんだろう。
水溜りを挟んだ向こう側から俺を見た彼女は、「私も飛んでみようかな、」と小さく呟く。
『お!飛んでみちゃう?』
「でも届かないかも、」
『大丈夫。届かなそうだったら俺が引っ張ってあげるから。』
そう言って笑って見せれば、Aちゃんはほんの少しだけ目を大きくさせて、それからコクリと頷いた。
正直俺は、あの家で暮らすみんなの過去とか抱える事情とか今までは全く興味はなかったんだけど、
今回はなんか、知りたいなって思っちゃったんだよね。
たとえば昨日の夜4人で食卓を囲んだ時になんだか少し寂しそうな顔をしていたこととか。
今日の朝、俺が絵を褒めたときに見せた泣きそうな顔とか。
あとは、さっきから何度か鳴ってるAちゃんのスマホの着信音の訳とか。
なんでか知りたいと、思ってしまった。
…俺たちまだ出会ったばかりなのにね。
『おいで、Aちゃん。』
そう言って手を伸ばせば、彼女はやっぱりどこか憂を帯びた表情で微笑んで。
青空の下、太陽の光を反射する水面を、Aちゃんが大股で飛び越えた。
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こゆき(プロフ) - なべふかさん» コメントありがとうございます…!!そのように言っていただけて本当に嬉しいです泣 今後もよろしくお願いします!!体調、気を付けます! (2020年7月19日 23時) (レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
なべふか - コメント失礼します!!新しいStoryも素敵です*こゆきさんの言葉使いと言うんですかね…他には無い表現が読んでいて楽しいです、今後も更新頑張って下さい!くれぐれも体調には気を付けて下さい^^ (2020年7月18日 17時) (レス) id: 2b33477f89 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - まみさん» ありがとうございます…!!一応なんとなくのオチは決めてるんですけど、まだ迷ってるのでどうなるか楽しみにしていただけたら嬉しいです!!大人な深澤さん、わかりました…!たくさん盛り込みますね!今後もよろしくお願いします…! (2020年7月18日 13時) (レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
まみ(プロフ) - このしぇあはうす楽しすぎます!!全員良すぎて1人に絞れません泣。しかし深澤担としては、からかってくる大人な深澤さんが更に見たいです!しかしツンなしょっぴーもかわいいさっくんも非常に上手いです!!流石です!!更新楽しみにしてます! (2020年7月17日 22時) (レス) id: 5ad6cf8e80 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - (名前)ひなさん» コメント嬉しいです…!!私もちょっと悪な感じな翔太くんが好きなもんで笑 ありがとうございます、楽しんでいただけるよう更新頑張ります…!! (2020年7月3日 16時) (レス) id: e5c6dc30ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こゆき | 作成日時:2020年6月22日 21時