しぇあはうすの住人。

. ページ21

.




……痛すぎる。


当たった時ドスっと凄い音がしたから、このあとものすごく腫れる気がする。

ほんとにつくづく、私たちは相性が悪いらしい。



渡「え、お前なんでこんなとこいんの、」

佐「翔太がなかなか降りてこないから呼びに来てくれたんだよ！」

打ったおでこを抑えていると、急いで着替えたのかネクタイを首にぶら下げて、スーツも中途半端な感じで着てる渡辺さんが、「…わりぃ、」と私の顔を覗き込んだ。


眠そうな目がぽやーっと私を捉えて、ちょっと心配そうな顔をしてるから、この人私に対する態度だいぶマシになったなぁなんて。



多分昨日一緒にスーパーに行かなかったら、こんな風に朝、顔を合わせようもんなら秒で睨まれていたことだろう。

…佐久間さんに感謝しなきゃな。



『大丈夫です、てか会社、』
渡「え？あ！」

やばいそうだった、と慌て出した彼は、ネクタイをしめながらものすごいスピードで階段を降りて行って、

髪ボサボサだけどいいのかな、なんてその後ろ姿を眺めた。









佐「いやー、もう朝から大変大変！」

私の作った朝ごはんをモグモグと食べながら、満面の笑みでニコニコしてる佐久間さん。


二人が仕事に出かけていき、今日はお休みだという佐久間さんと今はこの広い共有スペースで2人きりだ。


私はさっきできた額の腫れに軽く保冷剤を当てながら、気持ちいくらくらいにおいしいと言って朝ごはんを食べてくれる彼を見ていた。




佐「ね、そういや昨日聞き忘れてたけど、Aちゃんってなんの仕事してるの？」
『…あー、えっと、』


くりくりした瞳が私を捉えて可愛らしく首を傾げる。

平日だというのにこんな風に家にいるから気になったんだろうか。



『…絵、描いてます。』

佐「絵？」

その言葉にキラキラと目を輝かせた佐久間さんは、ちょっと前のめりで私の話の続きを待ってる。


『絵っていうかイラスト？みたいなのをちょっと。』

佐「イラストレーターってこと？」


『そんな感じです。フリーランスでやってるんで収入は全然安定しないですけどね、』

佐「え、すごいじゃん！見せて見せて！！」



興味津々なのか、私の描いたイラストが入っているスマホの画面を見せると、

するりと私の手からそれを取って大きな瞳でじーっと画面を眺め始めた。


.

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す