しぇあはうすの住人。

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久しぶりに大人数で食べた晩ご飯は、なんだかいつもより美味しく感じた。


佐久間さんが作るのを手伝ってくれたからか、カレーの中に入ってる人参はたまに変な形をしてるものもあったけど、
まあ味には支障はないし、何より目の前で誰かが美味しいと言いながら食べてくれるのは嬉しい。


お兄ちゃんがあの家を出て行ってからは、私とあの人の二人きりで、ろくに会話もないし美味しいなんて言ってくれることはなかったし。



『はぁ、疲れたー、』

新しい環境で過ごす一日目は色々疲れたけど、なんとかみんなと話せるようになったし順調なスタートだったかな。




時計の針はもう夜の11時。
私はベットにゴロンと寝転んで、切っていたスマホの電源をつける。


『…うわ、すごい量、』

数時間ぶりに開いた画面には、大量の未読メッセージと着信履歴。



私は少しだけ深呼吸した後、お兄ちゃんから来ていた大量のメッセージを眺めた。


"今どこにいるの？"

"電話出てくれないの？"



数十分毎に送られてきているそんなメッセージをスクロールして読んでいく。

お兄ちゃんからの連絡を無視するなんて今までは考えられなかったけど、私も早く兄離れしなくてはいけない。



だってどれだけ望んだって、私のお兄ちゃんへの恋心が叶うわけがないんだから。

結婚するとかそういう問題以前に、私たちは実の兄妹で、一生結ばれることはない。





"父さんから聞いた、家を出たってどういうこと？"




やっぱり、あの人が言ったんだ。

あれだけわかりやすい置き手紙をしておけば、いくら私に興味がないあの人でも気づくのか。



開けた窓から入ってくる生温い風が私の肌を撫でて、お風呂上がりの汗ばんだ身体に張り付く。



……なんで私は、実の兄に恋をしてしまったんだろう。

一向に解決しないその疑問は、この家に来て少し落ち着いていた心の中の黒い塊を再び刺激する。



キモチワルイ、

自分への嫌悪感と、兄へのやり切れなさと、兄を奪ったどこの誰かもわからない女への怒りとが混ざり合って、また少し呼吸が苦しくなる。




"ごめんなさい"


一言、それだけ送信して、すぐについた既読には気づかないふりをして私は再び電源を落とした。


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