五 ページ5
・
「でもさ、全員にこんなのやってたら恵大変じゃない?」
「は!?」
久しぶりに聞いた恵の大きい声。
こんなに表情筋動いたんだっけ?ってくらいの驚いた顔。
野薔薇と悠仁にもこれをするのは、呪力的にもお金的にも大変だろうなって心配して言っただけなのに、そんな顔する?
「……お前だけに決まってんだろ。ここまでしておいてただの同期だと思ってるのかよ、バカ」
ただの同期じゃない。
頭の中でその言葉がこだまする。
ただの同期じゃない同期。
つまり、特別?
じゃあさっきの言葉も私にだけだったってこと?
自惚れていいの?
ぐるぐる色んな問いが浮かぶ中、彼の顔をちらりと見る。
今まで見たことないほど真っ赤に染まっていた。
目も合わせてくれないし沈黙したままだけど、恋愛関係に鈍い私でもわかる。
これはきっと本気だ。
ここで私から「恵が好きだよ♡」とか言えれば可愛いんだろうけど、生憎そういうことを言える性格じゃない。
でもにやにやとこみ上げてくるものを我慢できるほど、クールでもない。
「愛の言葉とかないの?」
「俺はバカにつける薬が欲しいよ」
「ほら?どう?」
がしがしと頭をかいて照れ隠しをしている恵を煽れば急に身体を引き寄せられて、あっという間に腕の中。
任務中にだってこの腕の中に入ったことはあるけど、それとは違う優しく包み込む腕。
「ムードとか考えろよ」
「今更いらないかなって」
ぐりぐりと肩に顔を押し付けながら、意外にしっかりした背中に腕を回す。
私の背中にある腕も呼応するように、締め付ける力が強くなる。
耳元で
「死ぬなよ、絶対」
「確約はできないよ。でもこんなに愛してくれる恵くんがいるなら、生きなきゃね」
「そこは約束しろよ」
「愛の呪いでもかけてくれたら、死なないかもね」
「かけただろ、それ」
つけてやるから貸せよと私の手から離れたネックレスは、瞬く間に首につけられる。
少し短めのネックレスは、まるで首輪のよう。
首元に宿った呪い。
もらったばかりのネックレスをつまんで掲げながら、にやにやと見つめる。
もらったばかり、できたばかりの生きる理由。
突然の命の保証。
私だって、不平等に救われていいのかもしれない。
4人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:モノモノ☆ | 作成日時:2021年1月30日 14時