捨て駒 F ページ6
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______我輩はモブである。名乗るほどの名前はまだ無い。
只今絶賛、渋い顔のお偉いさん方の間で、左遷にするかクビにするか飛ばすか停職処分か現状維持かの会議にかけられております。
顔面は一応真顔で通してますが、正直心臓はバックンバックン言っております。
いや、確かに結構やべーことしたなとは思ってますけども、警視総監までお目見えなさっちゃダメでしょ。
たかだかモブ隊員の処分に関する会議っすよ。
大袈裟すぎませんかね。
なんて考えているうちに私の処分が決まりました。解雇です。
くそっ、やっぱりこの世に神なんて居なかったんだ……!!
……とは言うものの、ここで私を解雇にしなければ警察側も面子を保てないのだろう。
なんてったって、爆弾を解体するはずの機動隊員が爆弾を外に投げ捨てたのだから。
無理もないよなぁ。
そのせいで下に避難していた一般人数名が軽く怪我したらしいけど、正直、機動隊員約十名が死ぬよりよっぽどマシだろ、とか思ってしまう私は、多分警察に向いていない。
向いてない奴はごちゃごちゃ言わずさっさと辞めさせて頂きます。はい。
上層部殿、お疲れっしたー。
「さて、母上にはなんと説明すべきか」
機動隊の部署に置いていた荷物インダンボールを腕に抱えて、晴れ渡った空を見上げる。
そういえば、卒業式の日の空もこんなだったな。
___因みに、あの場で私が咄嗟に庇った長髪の機動隊員はまさかの萩原くんでした。
あくまで噂程度でしかないが、彼の方も防護服を着ずに解体作業に当たっていたとして、一ヶ月の謹慎処分が下ったらしい。ドンマイ同期。強く生きろ。
そんな適当な激励を心の中で送っていると、ついさっき出てきたばかりの警視庁の裏口から、私は何者かに声をかけられた。
「君、少し良いかね」
「はい?」
気配でなんとなく誰かが居ることは分かっていたが、振り返った先に居たのは、想像していた倍以上歳を食ってそうな強面のおじさんだった。
自己紹介によると、彼は“ゼロ”という所で指揮をとっているお偉いさんなようで、先ほどの会議を盗聴しながら私という人間に興味が湧いたらしい。
取り敢えずこのお偉いさんが盗聴の件を包み隠さず暴露できるメンタルゴリラであることは分かった。
なんて考えてる間にも、男は話を続けていて。
「私は君のその合理的な行動に大変感心した。そこで、職を失った君に私から提案がある。
______我々“ゼロ”の、捨て駒となってみないか?」
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メル(プロフ) - これはまじで神作だわ、、初めてここまで鳥肌のたつ作品に出会えました。 (4月19日 21時) (レス) @page35 id: 4a64b135ae (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - これが神作ってやつか…………最高すぎました (4月15日 18時) (レス) @page35 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵蜜柑 - 好きです(唐突な告白) (6月15日 7時) (レス) @page35 id: d4d5a8cd26 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - やばい、すき (6月12日 21時) (レス) @page35 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 構成から何からもう最高に格好良過ぎ大好き。夢主は当然設定とその小出し方がもうほんとドタイプだし終わり方も最高過ぎた……。まじで良いお話ありがとうございます (5月30日 12時) (レス) @page35 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2022年4月29日 0時