×××× ページ29
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思い返すと、私が普通だった瞬間なんて一ミリもないんじゃないかなぁ、って。
深夜と呼ばれる時間帯の藍色の空を見上げて、私はなんだか酷く虚しくなった。
＿＿＿＿＿＿思考だけでも一般人を装ってれば、いつかは普通の人みたいな感性を取り戻せると思った。
かっこいい人を見て盛り上がって、可愛いものを見て嬉しくなって、友達が出来なくて寂しがって、困ってる人が居たら助けてあげたくなって。
……でもやっぱり、死体を偽造しながら、私には無理なことだなって思った。
どれだけ男が酷い姿になっても、返り血を浴びているはずの私は、何も感じることが出来なかったから。
「なら、一緒に逃げ出しちゃおっか、A」
……ただ唯一、母親代わりになってくれたあの人だけが、私の生きる理由だった。
ずっとずっと無知のままで居ればよかったのに、本の世界を通して、両親が殺されて誘拐される前は、私自身も当たり前に持っていた普通を、知ってしまって。
それで今更、化け物でも兵器でもなくて、「普通の人間になりたい」って、そうやって泣く私に、唯一、その手を差し伸べてくれた人。
普通じゃない私に、笑って「逃げよう」って言ってくれた人。
だから私は、ただあの人と平和に暮らしたくて、その為に組織の幹部を全員殺して、暗い裏の世界から明るい表の世界に、手を繋がれながら飛び出して。
あの人を絶対死なせないって“目的”の為に、一番手っ取り早い方法として、どうでも良い警察官なんか目指して。
……なのに結局、あの人は私の勤務中に、私が殺し損ねた組織の残党に殺された。
アパートの一室に横たわる母さんの死体を見た途端に、なんだか全てがどうでも良くなった。
復讐する気も起きなかった。
だってそんなことをしても、あの人は帰ってこないから。
「…………質問の答えがまだだったね。
私が死のうとするのは、死ぬ理由はあっても、生きる理由が見つけられないからだよ」
今日まで未練ったらしく生き抜いてきたのは、全部母代わりのあの人を傍で守る為だった。
その役目が無くなってしまったら、私に残るのは“普通じゃない化け物”というレッテルだけだ。
……そんな奴に、生きてる価値があると思う？
「私みたいな
だから貴方は何も気にせず、このまま当たり前の日常に戻ってくれ。
私ももう十分、日常は味わったから。
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メル(プロフ) - これはまじで神作だわ、、初めてここまで鳥肌のたつ作品に出会えました。 (4月19日 21時) (
レス) @page35 id: 4a64b135ae (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - これが神作ってやつか…………最高すぎました (4月15日 18時) (レス) @page35 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵蜜柑 - 好きです（唐突な告白） (6月15日 7時) (レス) @page35 id: d4d5a8cd26 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - やばい、すき (6月12日 21時) (レス) @page35 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 構成から何からもう最高に格好良過ぎ大好き。夢主は当然設定とその小出し方がもうほんとドタイプだし終わり方も最高過ぎた……。まじで良いお話ありがとうございます (5月30日 12時) (レス) @page35 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：無糖
| 作成日時：2022年4月29日 0時
