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組織を抜けた彼女は、同じく組織内の研究者として働いていた女の養子となり、上野Aとしてその後は普通の一般人と同じ生活を送っている。



気になる点と言えば、彼女の通っていた高校・大学が松田と萩原の通っていた所と同じという点だろうか。


彼女が高校を卒業した時点で親代わりである女が再婚し、苗字が上野から現在の可愛川に変わる。

大学を卒業した後の進路は恐らく、俺らが把握している通りだろう。




そう思い警察学校を卒業した後の経歴に目を通した俺は、見覚えのある事件を見つけ、密かに眉を顰めた。








「七年前の11月7日……」








この日は確か、アイツらが関わった事件の発生日のはず。

あの一件に可愛川も関わっていたのか?



報告書によると、鑑識が事件当日の映像を録画した監視カメラを回収しているらしい。


休憩がてら確認してみるか、と俺は重たい腰を上げて立ち上がった。




向かう先は事件の調査に使う証拠保管室。

埃の溜まったそこで七年前の日付を探し出し、目当ての段ボール箱を引っ張り出すと、ついこの間まで未解決だった為か、証拠品はまだ綺麗に保存されているようだ。




その中にある事件当時のマンション内のカメラ映像を取り出し、俺は早速隣の部屋のパソコンで映像ファイルを開いた。


映像には微かにノイズがかかっていたが、それでも、彼女の姿を捉えるのは難しい事ではなかった。








《______こんなとこで死んでたまるかぼけええええ!!!!!》








そんな台詞を叫んで件の爆弾を窓の外に投げ捨てる可愛川。


その後彼女は瞬時に近くに放置された機動隊の盾を掴むと、後ろ姿だけが映る男___萩原の前でそれを構え、爆風を回避していた。




……一般市民への危険性とか、被害拡大の懸念とか。

そういう、警察官が当たり前に配慮すべき綺麗事を抜きにして、判断を下すとするならば。




______可愛川がこの行動をとっていなければ、間違いなく、このフロアに居た人間は全員殉職していただろう。


映像だけでも分かる。それだけの威力が、あの爆弾にはあった。








「……アイツが救ったのか」








ヒロの件も、萩原の件も、全て可愛川が。

人間に嫌悪感を抱いていてもおかしくなさそうな、アイツが。



画面には映像が終わったことを示す矢印のマーク。


それをなんとも言えない顔で見つめていると、突然、スーツの胸ポケットに入れている携帯が小刻みに震え始める。



電話の主は、___諸伏景光。







《ゼロ!!今すぐ可愛川を探してくれッ!!!》








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メル(プロフ) - これはまじで神作だわ、、初めてここまで鳥肌のたつ作品に出会えました。 (4月19日 21時) (レス) @page35 id: 4a64b135ae (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - これが神作ってやつか…………最高すぎました (4月15日 18時) (レス) @page35 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵蜜柑 - 好きです(唐突な告白) (6月15日 7時) (レス) @page35 id: d4d5a8cd26 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - やばい、すき (6月12日 21時) (レス) @page35 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 構成から何からもう最高に格好良過ぎ大好き。夢主は当然設定とその小出し方がもうほんとドタイプだし終わり方も最高過ぎた……。まじで良いお話ありがとうございます (5月30日 12時) (レス) @page35 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作成日時:2022年4月29日 0時

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