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＿＿＿実はアイツが交通部に移動して行ってから、一度だけその姿を見たことがある。
あれは一年前の、夜勤明けでまだ薄暗い時間帯だった。
胸ポケットに仕舞おうとした手帳を落として、それを拾い上げた時。
俺の方に猛スピードで向かってくる、危なっかしい運転のトラックがいたんだ。
それを見た俺も高木も焦って、「早く渡った方が良いですかね」「だな」なんて会話をしているうちに、寝静まった街にはとんでもなく口の悪い声が反響していた。
『＿＿＿＿＿＿そこのトラック止まりやがれー！！！さもなくば撃つぞー！！！！』
『……可愛川？』
その声は確かに、二年間一緒に仕事をやって来た後輩のもので。
思わず声の方角を見つめて立ち止まっていると、叫ばれたトラックはゆっくりとスピードを緩めて路肩に駐車していた。
後ろに止まったパトカーからは、数ヶ月前と変わらぬ姿の可愛川が出てきて。
運転席に駆け寄るその後ろ姿に、「なんだ、案外元気にやってんじゃねぇか」なんて、柄にもなく安心したもんだ。
だからこそ余計、分かんねぇんだよな。
アイツが警察を辞めちまった理由が。
「＿＿＿＿＿＿伊達さん。私はきっと、警察に向いていないんでしょうね」
いつか、長時間に渡る張り込み捜査が終わって、労りついでのコーヒーを可愛川に奢った日。
アイツは受け取ったコーヒーを両手で包み込んで、なんの感情も孕んでいなさそうな眼を俺に向けた。
自分は警察に向いていないという可愛川。
だけど俺は、教育係としてコイツを見てきたからこそ、到底そうは思えなかった。
なんでそう思うんだと問う俺に、可愛川はゆらりと今度は空を見上げて。
「今日、目の前で人が刺されたじゃないですか」なんてぼんやりと話を続ける。
それは張り込み中、通り魔が犯行に及んだ瞬間のことを言っているのだろう。
あぁそうだなと肯定すると、彼女は一拍置いて話し始めた。
『……あれ見て私、あぁあの人、刺し所悪いなって、思っちゃったんですよね。もう少し上に刺せば、臓器に傷をつけられるのにって』
こんな事を考える私が、本当に警察に向いてると思いますか。
その問いに明確な答えを出してやれるほど、俺はまだ人生を重ねていないが。
それでも俺には、そんな問いを投げかけるお前が、今にも泣きそうに見えたんだよな。
『……小難しいことは分かんねぇけどよ、自分の中でそんな風に思えるうちは、十分向いてんじゃねぇか？』
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メル(プロフ) - これはまじで神作だわ、、初めてここまで鳥肌のたつ作品に出会えました。 (4月19日 21時) (
レス) @page35 id: 4a64b135ae (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - これが神作ってやつか…………最高すぎました (4月15日 18時) (レス) @page35 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵蜜柑 - 好きです（唐突な告白） (6月15日 7時) (レス) @page35 id: d4d5a8cd26 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - やばい、すき (6月12日 21時) (レス) @page35 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 構成から何からもう最高に格好良過ぎ大好き。夢主は当然設定とその小出し方がもうほんとドタイプだし終わり方も最高過ぎた……。まじで良いお話ありがとうございます (5月30日 12時) (レス) @page35 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：無糖
| 作成日時：2022年4月29日 0時
