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______あの手紙の意味が明かされたのは、それから何年が経過した頃だったか。


組織の潜入捜査で仕入れた僅かな手がかりを上に報告しに来た俺は、長居する理由もなかった為、目的を達成するなり踵を返した。


だがその足を止めたのは、“ゼロ”の中でもNo.2に位置する男の言葉だった。







「“次は無いぞ、諸伏景光”」


【次はヘマすんなよ、諸伏さん】







男の言葉が、三年前に見た手紙の内容に重なったのだ。


ハッとして振り返る俺に、男は衝撃の事実を淡々とした口調で続ける。







「お前のその命は、私の捨て駒が“生かしてやった”ものだ。……精々無駄にしないことだな」


「捨て、駒……?どういうことですか、その捨て駒って、一体……!」


「それを知って、お前はどうする?」








薄暗い室内、背もたれに深く体を預けた男は、鋭く俺を睨み上げた。


いや、実際にはそんな風に見えたのは俺だけで、向こうは普通に見上げたなのかもしれないが。

その区別さえつかないほど、今の俺は動揺していた。



あの時と、同じ感覚。


知られたくない部分さえ引き摺り出されるような、見えないところから心臓を鷲掴みにされているような。





……まるで、お前の命運を握っているのは自分だ、とでも言われているような。


そんな、息が詰まるような、不気味な感覚。





確かに、彼の言う捨て駒の正体を知ったところで、俺はどうするというのだろう。


彼に会って、感謝を伝える?

死体を偽造したであろう彼に、俺達の協力者になってもらう?



……いや、どちらにせよリスキーだ。彼はもう既に一般人の中に溶け込んでいるのかもしれない。




だとしたら、命を救われた俺が、彼にすべきことは……








「______組織が壊滅するまで、俺が彼の生活を、守ります」








多少でも組織と接触してしまった彼が、この先危険に晒される可能性は、決して0じゃない。


だからせめて、その危険性がなくなるまで彼の安全を保証することが出来れば。

少しは、顔も名前も知らぬ彼に、恩を返せたりするのではないだろうか。




机に手をついて詰め寄る俺に、男はふっと笑みを浮かべると、やがて意味深な言葉を口にした。







「その様子だと心配はなさそうだが、身の安全くらいは確保してやっても良いだろう。

 “彼女”のことは頼んだぞ、諸伏」







ある単語に引っかかりを覚えて俺が固まっている間にも、男はその名前を口にしていた。







「私の捨て駒は、君と同期の可愛川Aだ」







_→←死者についての考察



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メル(プロフ) - これはまじで神作だわ、、初めてここまで鳥肌のたつ作品に出会えました。 (4月19日 21時) (レス) @page35 id: 4a64b135ae (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - これが神作ってやつか…………最高すぎました (4月15日 18時) (レス) @page35 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵蜜柑 - 好きです(唐突な告白) (6月15日 7時) (レス) @page35 id: d4d5a8cd26 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - やばい、すき (6月12日 21時) (レス) @page35 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 構成から何からもう最高に格好良過ぎ大好き。夢主は当然設定とその小出し方がもうほんとドタイプだし終わり方も最高過ぎた……。まじで良いお話ありがとうございます (5月30日 12時) (レス) @page35 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作成日時:2022年4月29日 0時

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