死者についての考察 ページ19
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______コードネームすら与えられていない“彼”の第一発見者は、俺だった。
たまたま取引に使うはずだった古い倉庫の床に、その死体は目も当てられないほどの状態で投げ捨てられていた。
確かここは、組織の人間、もしくはその関係者しか出入りを許されない場所なはず。
ということは、目の前にある“コレ”も恐らく、元々は組織内の誰かの死体なのだろう。
仮に裏切り者として処分されたとすれば、俺達と同じNOCだった可能性が高い。
せめて海に投げ捨てられる前に、身元だけでも割り出しておいた方が良いか。
そう思い、死体に一歩近づいた俺は、そこで漸く得体もしれない違和感の正体に気づいた。
______身元の特定につながるものが、全て消されていたのだ。
男の顔面は鈍器で何度も殴りつけられたかの如くぐちゃぐちゃに潰れ、指紋を採取しようにも、両手首は切断されてどこかに持ち去られている。
鑑識に回せば歯型でもなんとかいけるかと思ったが、残念なことに、歯は一本も残らず抜き取られていた。
……あまりにも、完璧な殺人だった。
組織の人間はとうとうここまで徹底するようになったのか、と。
背筋に冷たいものが走る俺に突きつけられたのは、男のポケットに入れられていた、たった一枚の紙切れで。
___【次はヘマすんなよ、諸伏さん】
そこに連なる文字列に目を通した途端、心臓はどくりと嫌な音を立て、全身からはぶわりと嫌な汗が噴き出した。
息が整わない。
走ってもいないのに乱れ続ける呼吸、手紙を握る指先の震え。
…………この手紙の相手は、一体誰だ。
「お前は、何者だ……」
ただの紙切れに問いかけたところで、それは所詮、ただの紙切れに過ぎなかった。
それから数日後に分かったことだが、あの死体を偽造した人間は、ゼロの携帯すらもハッキングしていたらしい。
送信した形跡のないメールが一通、ジン宛に送られていたのだとか。
その内容は、___【裏切り者を一人始末しました】という簡素なもの。
当たり前だが、俺たち公安はなるべく必要のない殺しは避けるようにしている。
だから今回も、ゼロには全く身に覚えがないという。
つまり、何者かが俺達がNOCであることを把握した上で、俺達の有利になる状況を作り上げているということだ。
だが、ここまで来ても、俺には未だに分からないことが一つある。
【次はヘマすんなよ、諸伏さん】
……あの手紙の内容は、一体。
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メル(プロフ) - これはまじで神作だわ、、初めてここまで鳥肌のたつ作品に出会えました。 (4月19日 21時) (レス) @page35 id: 4a64b135ae (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - これが神作ってやつか…………最高すぎました (4月15日 18時) (レス) @page35 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵蜜柑 - 好きです(唐突な告白) (6月15日 7時) (レス) @page35 id: d4d5a8cd26 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - やばい、すき (6月12日 21時) (レス) @page35 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 構成から何からもう最高に格好良過ぎ大好き。夢主は当然設定とその小出し方がもうほんとドタイプだし終わり方も最高過ぎた……。まじで良いお話ありがとうございます (5月30日 12時) (レス) @page35 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2022年4月29日 0時