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一度考え始めると、人間はなかなか止まれない。
もしもあれが俺達だと分かっての嘘だったならば、彼女は高校の二年間同じクラスだった上野Aなのか?
でも、どうしてそんな嘘……
十年以上越しに浮上してきた矛盾点。
それについて俺が考え込んでいると、不自然に思った陣平ちゃんが「おい、萩原。どうした」と俺に声をかけてくる。
もしかしたら、陣平ちゃんに聞けば何か分かったりするだろうか。
取っ掛かりを得る程度の気持ちで、俺は彼に思いついたことを話してみた。
「……お前の推理が正しいとすりゃ、警察学校時代に同じ教場だった“可愛川A”も、お前の言う“上野A”と同一人物ってことになんぜ」
「……は?ちょっと待って、思考が追いつかない。なんでそこがイコールになるわけ?」
「お前、気づいてなかったのか?髪はバッサリ切ってたが、大学時代にお前が人違いした奴はどう見ても可愛川だったぞ。
まぁ、お前もなにも言わねぇし、俺も別に必要なかったから言わなかったが」
まさか気づいてなかったとはな、と言われて、咄嗟にそりゃそうだろと思う。
逆に一回しか会ってないような人間の顔、よく覚えてたな陣平ちゃん。お前人の顔覚えるの苦手だろ。
そんな俺の心情を読み取ったように、彼はくしゃりと顔を歪めた。
「……別に覚えたくて覚えたわけじゃねぇから。一回そいつと大学で講義被った時、タイムカードに書かれてる“可愛川”の名前が見えたんだよ。そしたら、同じ教場にも“可愛川”って苗字のやつが居ることに気づいた。それだけだ。
とは言え、俺も見えたのは苗字だけで、“可愛川”なんていう珍しい苗字のやつがたまたま俺たちの近くに二人いたなら、話は別だ」
そんな可能性はあまりにも低いと、彼は言いたいのだろう。俺もそれには同意見だ。
相手が佐藤さんとかだったならば全然あり得るが、俺も四半世紀以上生きてきて“可愛川”なんて苗字を聞いたのは一度きりだ。
家族でもなければ、近くに偶然何人も居るとは思えない。
「……え、てことは、あの時俺を助けてくれたのも上野ってこと?」
「助けてくれた……?なんの話だ?」
「ほら、前に話したじゃん。例のマンションの爆発事件で、俺を盾で守ってくれた子がいるって」
「……あー」
「ほんと人の話覚えてねぇよな、陣平ちゃん」
「野郎の色恋沙汰ほど興味ねぇもんはねぇよ」
「俺の古傷抉らないでくれる?」
俺、これでもまだ結構引きずってんだからな、あの日のこと。
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メル(プロフ) - これはまじで神作だわ、、初めてここまで鳥肌のたつ作品に出会えました。 (4月19日 21時) (レス) @page35 id: 4a64b135ae (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - これが神作ってやつか…………最高すぎました (4月15日 18時) (レス) @page35 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵蜜柑 - 好きです(唐突な告白) (6月15日 7時) (レス) @page35 id: d4d5a8cd26 (このIDを非表示/違反報告)
めいめい(プロフ) - やばい、すき (6月12日 21時) (レス) @page35 id: 19d12ec8ba (このIDを非表示/違反報告)
陽毬(プロフ) - 構成から何からもう最高に格好良過ぎ大好き。夢主は当然設定とその小出し方がもうほんとドタイプだし終わり方も最高過ぎた……。まじで良いお話ありがとうございます (5月30日 12時) (レス) @page35 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2022年4月29日 0時