【七つの大罪 ~もう一つの物語~ 】 (ページ2)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:16,392 hit

１話 “転生せし者” ページ2

瞼の裏に明かりを感じてゆっくりと目を開けた。ぼんやりとした視界はすこぶる悪い

視力はいい方だったんだけどなぁ、

ゆっくりと周りを見回せば、何となくここが室内だとわかった。背中に感じる暖かさにちゃんとしたベッドであることも

ところで、どうして私は寝てるんだっけ。あまり無い記憶力を使って記憶を辿れば、真っ暗な道路に響くパトカーの唸り声と、けたたましいブレーキの音。一瞬で身体に伝わる衝撃波

思い出した。事故に遭ったんだ

それなら目が見えなくなっててもおかしくはないか、自分でも吹っ飛んだってわかるくらいの勢いだったし

はぁ、と小さくため息をついて目を閉じる。別に無理に起きなくても、いずれ医者か看護師が見に来るだろうし、それに、一人暮らしの私だけど連絡を受けた同僚か誰かが面会に来るはず

そう思った時、明るい瞼の裏に影がかかって私の名前が呼ばれる

｢A、｣

聞いたことのない声。私を呼び捨てにするあたり、親族か、友人か。薄らと目を開けても、ぼんやりとしか見えない。そのもどかしさに声を出して体を動かす

｢ぅー、あ｣

..は？

本当に自分の声なのかと疑った。だって今のはまるで、赤子そのものじゃないか。もう20を過ぎた社畜OLがそんな声出せるわけない

｢起きたか、A｣

｢ぅ？｣

ゆったりと頭を撫でられる感覚に目を細めた。どこかで聞いたことある声だよなぁ、何となく、そんなことを思いながら

｢あぅ、｣

｢Aは元気だなぁ｣

ここ何処だよ、何で私赤子なんだよ

突っ込みたいところは山ほどあるけど、とりあえずこの視力をなんとかして欲しい。何も見えないから、何も出来ないし、さっき伸ばしたこの短い手足も、何に使えばいいのか

｢いででで、おっ、離せ！｣

｢ぁ..｣

｢あぁ、泣くな泣くな引っ張っていいから｣

どうやら適当にそこら辺にあるものを握ったら髪の毛らしき束を握ってしまったらしく、目の前の影は痛そうな声を出してもがいた

それより、やっぱり私は赤子になってるらしい。どうしてこんなにも考えがしっかりしてるかって、もともと24歳の社畜だからね

ところでここ、私が言葉を理解出来ているから日本だとして..いつの時代なのかな。戦国時代とかだったら嫌だなぁ、運動音痴の私なんてすぐ死んじゃうよ

｢国王陛下、お連れ致しました｣