風の声を尋ねる (ページ7)

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『で、その精霊さんがどうしたんですか？』

憶測は胸にしまい、本題を問う。

彼はどこからかライアーを取り出すと、詩を歌い始めた。

これはとある精霊のお話。

精霊はかつて遣えていた神を失うと、世界を彷徨い始めた。

自身は何を頼りに生きていけばいいのか。

今まで心の拠り所であった存在はどこかへ消えてしまった。

そうして、その精霊がたどり着いたのが、不調和な存在である1人の少女である。

その少女は精霊にとって未知数であり、そして新たな心の拠り所となった。

精霊は彼女について行くことに決めた。

旅の目的を探す少女と共に、新たな1歩を踏み出して______

どこか身近に感じるその詩は、きっと現在進行形で進んでいるのであろう。

彼はライアーをしまうと、儚げな表情で僕を見る。

いや、僕の奥底にいる何かを見つめていた。

ウェンティ「フルール…久しぶりだね」

その瞬間、先程の戦いで感じていた''自分じゃない何か''を感じた。

フルール｢バルバトス様…？バルバトス様…！？｣

ウェンティ「独りさせてしまってごめんね…えへへ…ダメな神様だったね、僕は…」

フルール「そんなことありません！私にとってバルバトス様はこの上ないほどに素敵なお方でした…」

ウェンティ「彼女に付いていくと決めたんだね。風神バルバトスは死んだ。
神の心を失った今、かつての力は無いし、あったとしてもモンドはもう大丈夫だ」

フルール「……」

ウェンティ「それに、僕自身も彼女のことが心配なんだ。
風のように自由奔放だけど、それでいて風のように消えていってしまう…

だから、フルール。君に彼女のことを頼みたいんだ」

フルール｢はい、もちろん…風神バルバトス様のご意志のままに」

ウェンティ「風は自由だよ、フルール。旅の終点は必ずしも''終わり''ではない。そうだろ？」

フルール「えぇ。このフルール。命に変えても、彼女を守り抜きます」

ウェンティ「うん、よろしくね」

自分じゃない感覚から、自分の感覚を取り戻すと、どこかすっきりとそれでいてそよ風のようにやんわりとした表情を浮かべる目の前の吟遊詩人……いや、ヒトリの神を見る。

ウェンティ「ありがとう、A」

僕は彼のお礼に応えるように、自身の風元素で蒲公英の羽を飛ばした。