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手塚side
軽く部室掃除を終えて、
俺は処分するボールを分け始めた。
隣でAは椅子に座って日誌を書いている。
『氷帝学園かぁ…』
手塚「不安か」
『…不思議と、負ける気はしないな』
自信満々に答えたAに
俺は心のどこかで少し寂しさを感じた。
越前を守って怪我をした時も、
期待通りの彼女の行動に
怒るに怒れなかった。
"他人への優しさとは
自己の犠牲によって成り立っている"
彼女はその言葉そのものだった。
『まだ、引退は早いよね』
手塚「__…そうだな」
ボールの音と、ペンの音が部室に響く。
手塚「…A、」
『なぁに?』
ペンの音が止んでこっちに顔を向けたA。
話をする時、彼女は必ずこっちを見る。
俺はそんな彼女に想いを寄せている。
"海外留学特待生"という
先生から見せてもらった書類が頭をよぎった。
手塚「いや、呼んでみただけだ。気にするな」
今は、全国だ。
約束したからな。
『ふふ、変な手塚くん。……ねぇ、』
手塚「どうした」
『跡部くんと当たっても大丈夫なの?』
手塚「…」
『左肘、完治してないよね』
何も言わない俺にAは察したのか、
『……そろそろ帰ろっか』
手塚「…書き終えたか」
『ばっちり!手塚くんは?』
手塚「このカゴは終わったな。」
『なら帰ろ!家まで送ってよ』
手塚「もちろんだ」
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作者名:+1 | 作成日時:2023年3月15日 21時