ヒロインの色恋沙汰とかどうでもよき｡【梟谷】

正面から来いよ ページ12

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「ねぇねぇ、山内ってうざくない？」

「分かる｡」


朝練はないけどいつも通り早く来てしまった朝｡教室に行こうと廊下を歩いていたら隣のクラスから聞こえてきたのは親友を貶す言葉だった。


「ちょっと人気だからって調子乗ってるよね」


「それな､この前も琴羽に対してキレたんでしょ？」


「ああいうのってムカつくよね」


悪口でお互いに盛り上がる女子二人｡あの子たちは二軍ちょい上の水沢さんのグループの子だろう｡確か片方は最近彼氏と別れて､彼氏の方が美紀に告ってフラれてたっけ。



直接言われたこと以外は無視しとけばいーよ｡



美紀はそう言って笑い飛ばすだろうけど私の中ではどうにも抑えきれない怒りが込み上げてきた｡


「影でコソコソと言い合ってるあんた達こそどうかと思うよ」


気がついたら教室のドアに背中を預けてそう言い放っていた｡


「はあ？」


まさか､聞かれていると思ってなかったのだろう｡ましてや話題にしていた人の友達｡二人とも驚いたように口をパクパクさせていた｡金魚みたいでウケる。



「あんたこそ誰かしらの悪口言ってるでしょ」


「そうよ｡自分のこと棚に上げてバカみたい｡」


へぇ、言い訳するとかずいぶん余裕だね｡
ここは学校だよ？誰が来るかなんてわかんない｡例えば、



「お前も山内と仲良いからって調子乗ってんじゃねーよ！」



「何してるの？」


私に逆ギレした女子はその声を聞いた瞬間に顔を真っ青にして慌ててる｡


「何してるの？」



少し声を低くして彼女達にもう一度質問するそいつの名前を私はそっと呼んだ。




「……赤葦」

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