マッチング中 ページ3
彼と会ったのは…二、三年ほど前だろうか。あのときの彼は一人前の納棺師として働き始めたばかりの頃だったと思う。化粧箱の手入れに時間が掛かるのか、仕事にのめり込み過ぎたからなのか理由はわからないが月明かりも無く夜も更けていた。あの日からずっと彼の帰路に付き添ってることになる。
「夜遅くに呼びつけてしまってすみません…」
「これが仕事なんだよ。あんたみたいに事前に頼んで貰えると助かるんだ。気に病むことはない。」
初めて会った彼はその言葉以降あまり言葉を発することは無い、というか話したがらないようだった。
「そこの十字路を右にお願いします」
「すみません、今のところは左です」
彼の言うことは事務的なことばかりで話題という話題は無く、送る側の自分としてはいささかつまらない客だった。が、彼としては静かだったのが好ましかったのか出発した時のピリピリとした雰囲気はいくらか和らぎ、別れ際には
「…ありがとうございます、また明日もよろしくお願いしますね」
なんて予約までしてくれた。
仕事柄そんなにお得意さんて感じのお得意さんは居らず、良い物件は別の提灯持ちに持ってかれてるから明日もまた来よう、ちょっとずつでも話せるようになればいいなってその日の仕事中ずっと彼のことを考えてた気がする。
半年後には天気の話に始まり、自分の話、一年たった頃には質問が出るようになり二年後には彼の話が聞けるようになった。
彼の名前はイソップ・カ一ル。
1部の界隈では仕事がいい納棺師だと有名な彼だが本人としては
「僕はただ、送り人としての仕事をしているだけで有名になりたい訳じゃないんです。」
「だから、こう、有名って言われてもどうなる訳でもないですし、僕としてはあまり…」
嬉しくはないらしい。
まぁ、仕事は増えるし会う人も多くなるだろうから彼は嬉しいわけないよな。
「そうだよなぁ」
「なに1人で納得してるんですか。ほら、もう家着いちゃいますよ」
彼に促されて周りを見ると見慣れた屋敷はもうすぐだった。
「もうこんな所か。じゃあ今日はここまでだな。」
「いつもありがとうございます、Aさん」
「これが仕事なんだよ。また明日もよろしく頼む。」
「えぇ、よろしくお願いします」
いつもの挨拶をして、ふと彼の顔を見る。
「なんですか」
「いや、なんか見とかなきゃと思って…」
「マスクは取りませんからね」
ふふ、と笑う提灯に照らされた彼に、少し不穏な気配を感じた。
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灰色のもふもふ(プロフ) - 塩化なとりうむさん» コメントと応援ありがとうございます。励みになります！カタツムリみたいな速度になってしまいますがこれからも応援よろしくお願いします！ (2019年7月21日 16時) (
レス) id: 268e903cb0 (このIDを非表示/違反報告)
塩化なとりうむ(プロフ) - 望んでたシチュというか設定というか...ありがとうございます！！更新は無理せずに行ってくださいね。応援してます！ (2019年7月20日 20時) (レス) id: 9c32775155 (このIDを非表示/違反報告)
灰色のもふもふ(プロフ) - 7-10さん» わぁあー！コメントと感想ありがとうございます！もっと可愛らしい言い回しをして見たかったんですが語彙が無くて…。そう言って貰えると嬉しいです。更新楽しみにしててくださいね！(*´∀｀) (2019年5月7日 16時) (レス) id: 268e903cb0 (このIDを非表示/違反報告)
7-10(プロフ) - そら豆で飲んでた珈琲君が8割型ぶっ飛びました。控えめに言って好きです。更新全裸待機です_(°ω°｣ ∠)_ (2019年5月5日 3時) (レス) id: 9a172e50f5 (このIDを非表示/違反報告)
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