敵、か ページ11
ア「何か…理由があるのではないか」
エ「殿下」
ア「シャプールを助けたのも、メルシィにあんな事を言ったのも、私を捕らえなかったのも……何か理由があるのかもしれない。ルシタニア側でありながら、ルシタニア兵を一兵も連れていなかったのも気になる…」
理由などあって当たり前だ。
だが、それはどんな理由なのだろう?
彼女は本当に我等の敵なのだろうか?
敵ならば、何故、何故………?
ぐるぐると回る脳内をまとめようとする、アルスラーンの考えを塞き止めるような極寒の声が、にわかに響いた。
ダ「あやつは敵です」
ア「………………ダ、リューン?」
ダ「ディアルは敵です、殿下。惑わされてはなりませぬ」
それはダリューンの声であり、アルスラーンの知る彼の声ではなかった。
まるで心臓を氷の槍で疲れたような、息が詰まるような声音だった。
ア「……何故だ?」
ダ「殿下、よくお聞きください。あやつは、我が伯父ヴァフリーズを討った女です」
ア「!!!」
エ「ディアル様が、だ、大将軍様を?」
ア「………………そんな…」
ダ「許してはなりませぬ。断じて……心を許してはなりませぬ。許せば殺されます。現に…私は殺されかけました」
ア「なッ、ダリューンが!!?」
ダリューンは外套と胸の甲を脱ぎ、服をめくりあげて傷を見せた。
血こそもう流れないものの、赤さの残る痛々しい傷がそこにあった。
ア「………っ」
ダ「殿下。どうか私に、あやつめを討ち取ることをご命令ください。今後奴が我等の障害となるは明白。殿下のご命令あらば、私は相手が女であれ、メルシィの主であれ、討ち取ってご覧にいれましょう」
エ「ダリューン様…」
ひざまづくダリューンの両眼には、憎悪の炎が揺れている。
アルスラーンがすくみあがるほどの殺気が、彼の黒い姿から立ち上っていた。
ア「(メルシィ)」
ダ「(ディアル。俺は絶対にお前を許しはせんぞ)」
ギ「(さて、どうする?血涙仮面卿……あんたの首、やばそうだぜ?)」
変貌したかつての味方と、現在の味方。
さらには、ナルサスもいまだ行方知れず。
アルスラーンの不安は高まる一方であった。
ヒ「……あの黒いのはデマヴァント山だな」
ニ「もうスぐ会エるネ」
サ「ああ」
アルスラーン達にとっての敵は、増加の一途を辿っていた。
8人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲き(プロフ) - アル戦ファンさん» シャプールかっこいいですよねぇ。アニメ漫画はほんとに残念でした。この小説ではもっと出番作るつもりです。もう少しでぺシャワールに着きます。アルスラーンとヒルメスが対峙する夜を書いたら、本編を再開する予定ですので、よろしくお願いいたします (2018年7月27日 16時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
アル戦ファン - 咲きさんのアルスラーン戦記の本編も楽しみに待っています (2018年7月26日 21時) (レス) id: 9f17638a99 (このIDを非表示/違反報告)
アル戦ファン - シャプールの再登場!私は彼も好きなんですよ。原作では生き残って欲しかったですよね(T_T)アルスラーンにとって信頼のおける武将になっていましたよね。万騎長一人でもアルスラーン派につくと心強いです。 (2018年7月26日 21時) (レス) id: 9f17638a99 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - アル戦ファンさん» 本編と違ってヒルメス派ですからね。元々セレンはヒルメスと相性イマイチですから、一緒にいるせいで王族への反感も増しちゃってるんです。アルスラーンにも火の粉をかける反面、こいつならまだ希望あるか…?という感じですね (2018年7月22日 13時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
アル戦ファン - ディアル陣営、アルスラーンに対する評価が厳しいですね(^o^;)彼らもいつかアルスラーンの王としての才能に気づくのでしょうか。そして、ディアル、ある意味ピンチですね。 (2018年7月21日 22時) (レス) id: 9f17638a99 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲 | 作成日時:2018年5月22日 7時