嬉しくて苦しい、二人の帰り道 ページ31
そう答えれば、八木さんは苦笑した。
オ「念には念を、か。全く便りになるよ、君は」
守「いえ。今日なんて迷惑ばかりかけました。あの…弾いちゃった手、痛くありませんか」
オ「手？………あー、あれかぁ。緑谷少年を追っかけるのに皆を吹っ飛ばした時ね」
軽い。
こっちの気持ちとは裏腹に、八木さんの声のなんて調子の軽いこと。
おおらかなのはこの人の美点だし、私も好きだ。
けど、気持ちの重みの差に、脱力感を禁じ得ない。
オ「あの時は君も必死だったからね。気にしなくて良いよ。むしろ凄かったじゃないか。１００倍率の
守「ご謙遜を。貴方のSMASHの方があの１０倍くらいは凄いでしょう。私のは風圧と敵の攻撃を倍返ししただけですよ。パンチには敵いません」
オ「そうかな。君も大概、謙遜し過ぎだよ」
ぽんぽん、と軽く頭を叩いてくる八木さん。
私は自分の顔に熱が集まるのを感じた。
…ふと、八木さんの手が私の頭の上で止まった。
守「…八木さん？」
オ「…ん。君こそ、頭とか痛くなかった？余裕無かったせいとはいえ、君のすぐ横でSMASHを撃ったんだ。余波は相当キツかったろ」
脳裏に先程の事が蘇る。
拳と共に地面に打ち込まれた、上昇気流をも生み出す、凄まじい風の渦。
髪がぐしゃぐしゃになったのを思い出した。
…この人は、後から過去を掘り起こすタイプなんだよね。
守「大丈夫、全然平気です」
オ「何言ってるんだ。毛根が痛んでたらどうする。女の子なんだからそういうとこ気にしなさい。せっかく綺麗なんだから」
守「……」
軽い。声は心配そうだけど、さらっと言ってのける。
そんな事言ってると意識されますよ、八木さん。
オ「(赤くなってる？可愛い…)守美ちゃん？」
守「なん、でっ、もないで、す」
オ「ロボットの真似？」
守「チガイマス」
本当に、意識なく言ってくれるのだから質が悪い。
私が今まで欲しくて、貰えなかった言葉を、この人はいつも不意打ちのように軽々と言ってくれる。
敬愛する人に言われるなんて、この上なく嬉しくて、幸せなことだ。
けど、心臓に悪い。
これじゃ私まるで、八木さんに恋でもしてるみたいだ。
守「今日はロールキャベツですからね」
オ「マジか！楽しみだ！」
…ああほんと、心臓に悪い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 107人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやな(プロフ) - 名前変更って出来ないんですか？ (2022年1月7日 15時) (
レス) id: 7ba9a83a1d (このIDを非表示/違反報告)
おと姫と愉快なサカナたち(プロフ) - 名前変換出来ないんですか？やってみたいです！ (2019年8月5日 15時) (レス) id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
せつ*(プロフ) - 名前は変えられないのですか？ (2019年2月10日 3時) (レス) id: 1218d17d35 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - 紅葉さん» ！！(゜ロ゜ノ)ノ すみません！ありがとうございます、すぐ直します！ (2018年12月28日 12時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 急な指摘すみません！朝食は【ブレイクファースト】じゃなくて【ブレックファースト】ですよ。ブレイクしちゃダメです！ (2018年12月27日 23時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：咲 | 作成日時：2018年8月13日 23時
