義姉と義妹 ページ7
リル「ぅう、ぅううう」
舟をこぎ出そうとするも、駄目だ、腕に力が入らない。
小舟ひとつ動かせないリルに、呆れと心配の視線が集まっていく。
リ「クッソォォォォッ………!」
?「リル姉さぁぁぁぁぁん!!」
リ「っ!?セレン、お前さん等…」
セ「勝手に一人で行かないでよ!心配したんだよ!」
セレン達がリルのもとに駆け寄った。
水面に浮かぶ小舟に座り込んだまま、動けない彼女をセレンが引っ張り起こす。
セ「この舟じゃ小さすぎて皆乗れないわ。他の大きいのを出してもらおう」
リ「皆って、お前も乗るのか?……乗れるのかィ?」
セ「乗れるよ、船くらい」
リ「だって、お前も海触れないだろ…?」
セ「落ちなければいい。乗れるわ」
リ「でもッ落ちるかもしれねェじゃねェか!」
顔をひきつらせてリルが低く叫ぶ。
小さな叫びには、色濃い不安と恐れがあった。
セ「……そうだね。落ちるかもしれない」
リ「なら…!」
セ「でも、それは一人の場合、よ。
一人で乗るなら、十中八九落ちるわね。だってあたしも海怖いもん。船揺れるし不安定だし」
あっけらかんと言って、肩をすくませる。
彼女の足は、寄せ来る波を避けている。
セ「海は怖いし、落ちたくないけど…一人じゃないから大丈夫。落ちないよう腕を掴んでくれる仲間がいるから」
リ「セレン……でも、アタシ…」
セ「リル姉さんさ、言ったじゃない。
あたしも姉さんも変わったよ?中身は怖がりなままだけど、ギランの商人達よりずっと強くなってるよ?
姉さんが本当に怖いのは、海じゃなくて海に触ると怒鳴ってきた商人達だよね?」
リルは面食らって沈黙した。
要するに、図星であった。
セ「もうあいつら、あたし達が海に触っても怒鳴ってこないよ?だって、リル姉さんはあいつらよりずっと強くて正義感のある
[血濡れのリル]だもん。
どうせ怒鳴られたところで、姉さん、
ア"ァン?って睨んで黙らせるん
でしょ?ふふっ」
リ「………お前な。アタシはそこまで不良じゃねェってばね」
セ「あら、あたしが知ってる姉さんはそんな人だよ。誰よりも強くて人助けばっかりしてたわ」
リルの人相がゆるく崩れた。
再び、海を見、舟を見る。
大事な男を助けにいくのに、恐怖などもう一欠片も残ってはいなかった。
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サヤノ - 咲きさん» 咲きさん、こんにちは、お久しぶりです、近頃はコロナウイルスの影響で買い出し以外は外泊は控えてますが、咲きさんは変わりはありませんか? コロナ対策法では手洗い、うがい、消毒を済ませるようにして下さい、くれぐれも気をつけて下さいませ。 (2020年2月22日 11時) (レス) id: dd5aa67050 (このIDを非表示/違反報告)
アル戦ファン - 最新のニュースですよ!アルスラーン戦記がミュージカルするんですよ。東京と大阪でしますから、私の場合、現地に行かないと行けませんね。その前にチケットを手に入れないと! (2019年4月28日 20時) (レス) id: 2ddfe4a912 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - サヤノさん» ありがとうございます。長らく更新していないにも関わらず、このようにコメントをいただけて幸せです (2019年2月5日 20時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
サヤノ - 咲きさん、お元気でしたか? 私は毎日毎日読むのを楽しみながら元気しています…必ず応援してます! (2019年2月4日 15時) (レス) id: 41b29e3ed5 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - アル戦ファンさん» わかりました。この章はもうお話がいっぱいなので、次は続編から書きますね (2019年2月1日 23時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲き | 作成日時:2017年3月11日 21時