旧友との決別3 ページ34
セ「随分、黒幕の肩を持つのだな。シャガード殿」
シャ・ナ・エ「「!?」」
気配も足音もなしに現れたセレンに、三人の視線が集まる。
彼女の後方には、おろおろしたアルフリードが、セレンとシャガードとナルサスとに忙しなく視線を動かしている。
セレンのこめかみには太い青筋が浮かんでおり、穏やかではない事は明々白々。
シャガードは不愉快そうに眉をひそめた。
セ「そやつは他者を争わせて自らは身を隠し、あまつさえ甘い汁を独占している。策士と呼ぶには程遠い、卑劣な臆病者よ」
シャ「卑劣も潔癖もあるものか!それが商いというものだ。より多くの富を得た者が勝者となる!この町ではそれが全てだ!」
セ「……ッこの、」
ナ「シャガード!!おぬし、ギランの太陽に目が眩んで、世の矛盾を見る視力を失ったのか!そんなものは勝利ではないし、そんな輩は勝者などとは呼ばんぞ!!」
…鉛の沈黙が彼等を包み込む。
嫌悪と、不愉快と、失望とがない交ぜになった苦しい静寂を破ったのは、あからさまに失念を剥き出しにしたシャガードの声だった。
シャ「……残念だよ、ナルサス。随分な空想家になってしまったようだ。おぬしはもう少し、頭の良い男だと思っていたのに」
そう言い捨てて、足早に彼等の前から去っていった。
こぼれ落ちるような呟きが、エラムの頭上に降ってきた。
ナ「…以前、お前達をあの男のもとに預けようとしたことがあった」
セ「何だと?」
ナ「陰頓の身である俺より、表舞台で生きるあやつのもとで生きる方が、幸せかと思ったのだ。……だが、今はそうしなくて良かったと心から思う。
そうしていたら奴め、お前達を奴 隷の鎖で縛り、側女の世話などをやらせたやもしれぬ。お前達が鞭で殴られる様など考えたくもない」
エ「ナルサス様…」
セ「そうなっていたら、あたしは死んでも化けてお前の前に舞い戻ったろうよ。あやつ、あたしの最も嫌いな類いの商人だ。反吐が出る」
アル「あれが本性ってことだよね」
ナ「……そうなのだろうな」
セ「フッ、やはり猫っ皮が厚いだけの俗物か……ここはそんなのばかりだ」
アル「…怒ってる?」
セ「当たり前だ。ナルサス、止めるなよ。判明したからには、とことん報いを受けさせねば。
…奴の生きる場所は、どうやら表舞台を装った裏舞台のようだからな」
輝く鳶色の目は、隠された闇を確かに捉えていた。
69人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サヤノ - 咲きさん» 咲きさん、こんにちは、お久しぶりです、近頃はコロナウイルスの影響で買い出し以外は外泊は控えてますが、咲きさんは変わりはありませんか? コロナ対策法では手洗い、うがい、消毒を済ませるようにして下さい、くれぐれも気をつけて下さいませ。 (2020年2月22日 11時) (レス) id: dd5aa67050 (このIDを非表示/違反報告)
アル戦ファン - 最新のニュースですよ!アルスラーン戦記がミュージカルするんですよ。東京と大阪でしますから、私の場合、現地に行かないと行けませんね。その前にチケットを手に入れないと! (2019年4月28日 20時) (レス) id: 2ddfe4a912 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - サヤノさん» ありがとうございます。長らく更新していないにも関わらず、このようにコメントをいただけて幸せです (2019年2月5日 20時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
サヤノ - 咲きさん、お元気でしたか? 私は毎日毎日読むのを楽しみながら元気しています…必ず応援してます! (2019年2月4日 15時) (レス) id: 41b29e3ed5 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - アル戦ファンさん» わかりました。この章はもうお話がいっぱいなので、次は続編から書きますね (2019年2月1日 23時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲き | 作成日時:2017年3月11日 21時