これからのあたしの居場所は…あの人の隣だ１２

弁解 ページ3

ペラギウスの血の気がザッと引いた。


唇さえ白くなったペラギウスに、冴えたセレンの冷めた声が突き刺さる。




セ「いくら賊と称しても、奴等もそれが分からぬほど無能ではありますまい。現に私のような一騎士に分かるようなこと…総督(あなた)が分からないはずもないと思いますが」


ぺ「…………………」


セ「狙われても商戦同等に襲われるわけではないのですから、町の私兵を我等が駐屯していたぺシャワールに向ける程度の事できたはずですが？
何故貴方は、殿下がルシタニア追討令を布告した後、兵一人もよこしてこなかったのですか？まさか、この期を良いことに蓄財に身を没頭していた、わけではありませんな？」






グサグサッ




言の刃はペラギウスを確実に心胆寒からしめている。





ここにいる全員の痛い視線を一身に受けて、ペラギウスは夏に関わらず手足が冷たくなるのを感じた。








目の前にいる年若い女騎士が恐ろしい。



優雅に微笑んでいる様は中々に美しいが、声は全く柔らかくなく、むしろ氷のごとく固く冷たい。





現に彼女の言う通りであった。





ルシタニア進行からこの半年、ペラギウスは総督に就きながら、ギランの町で取り立てた租税を王都へ送っていなかった。


ルシタニアに占領されていたから…というのは建前で、これを期に莫大な額の租税を私財としておさめてしまおう…というのが魂胆である。



その額、少なくとも金貨４０万枚以上に及ぶ。


総督の年給は、最高で金貨1000万枚はくだらない。



総督に就いてから八年、こっそり貯めていた分も合わせれば、今ペラギウスが隠し持っている金貨は相当の額だ。







これだけあれば、ルシタニアが来ることがあろうと海上へ逃れて異国へ行き、そこでゆうゆうと生活できる。


だが、どうだろう？



ルシタニアではなく王太子が来てしまったではないか。









セ「そうだとしたら、極めて利己的な事をしたものですな。王太子殿下にどう弁解なさるおつもりで？ペラギウス総督」







その時、俗塵にまみれた総督は、別の弁解の台詞を考えついた。




最悪の台詞を。






ぺ「お、王太子殿下。私めは確かに檄に応じず、このギランから動きませんでした。それは事実です。しかし動くわけにはいかない理由が海賊の他にあるのです。本当です」


ア「…ならば申してみよ」


ぺ「このギランに、ローデガルトという薄汚ない町の鼠共が徘徊しているのです！」


全「！！！」

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