大事な人 ページ16
ダ「グラーゼ殿、何故ギランはここまでローデガルドを嫌う」
グ「ダリューン卿、気持ちは分かるが、そんな威圧的に睨まんでくれ。
…俺はパルス人の血を引いているが、生まれは絹の国、育ちは故国と海の上。パルスに来たのは10年程前。
その時にはもう差別は行われていた。俺も理由が知りたくてそこらにいる奴に聞いてみたが、それくらい言わずと知れてるだろう?と流された。悪いが俺も知らんのだ」
ア「そうなのか……」
サ「………」
サジャータの大きな瞳がアルスラーンを覗き込んだ。
彼女の目は、何故そんな"当たり前"な事を知りたがるのか、理解できないと言いたげだった。
アルスラーンは悲しげに微笑して、サジャータの黒髪をすいた。
ア「…私はな、サジャータ…国を善くしたいのだ。おぬしの知らぬ、広いパルスを」
サ「……」
ア「広いがゆえ、私はパルスの事をよく知らぬ。ひとつの国だが、全てを見渡せる事ができていなかった。今も。昔も……そのせいでおぬしやセレン達を、辛い環境で放置し続けてしまった。知っていたら、助けられたかもしれぬのに…助けられる立場にいながらに、私は」
サ「……」
ア「サジャータ。私はローデガルドを救いたい。ギランがどんなにおぬし達を嫌おうとも、ローデガルドもパルスの一部だから。善くしたいのだ。私に尽くしてくれている、大事な仲間の故郷でもあるのだから…
…その"仲間"におぬしも入っていることを、気付いているか?」
サ「!」
サジャータは弾かれたように顔をあげた。
ア「おぬしも、私にとって大事な人だ。だから……嫌われるのが当たり前だなどと、そんな悲しい事を思わないでおくれ」
アルスラーンはサジャータの
こそばゆさと、満ち足りた幸福が、冷たく渇いた彼女の心を潤していく。
それはセレンがダリューンに対して抱く、温かい感情に似ていた。
サ「……ぁゥすらーン………」
蚊の鳴くような苦しげな呟きだった。
つぶれた喉から絞り出た声は誰の耳にも届くことはなかったが、緑眼は悲しみを忘れることができていた。
一行は、ギランとローデガルドを変えるため、まずはペラギウス総督を解任させる策を講じた。
残忍な世を黙認するような統治者を、そのまま今の座に置いておくわけにはいかないのだ。
夜が、来た。
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サヤノ - 咲きさん» 咲きさん、こんにちは、お久しぶりです、近頃はコロナウイルスの影響で買い出し以外は外泊は控えてますが、咲きさんは変わりはありませんか? コロナ対策法では手洗い、うがい、消毒を済ませるようにして下さい、くれぐれも気をつけて下さいませ。 (2020年2月22日 11時) (レス) id: dd5aa67050 (このIDを非表示/違反報告)
アル戦ファン - 最新のニュースですよ!アルスラーン戦記がミュージカルするんですよ。東京と大阪でしますから、私の場合、現地に行かないと行けませんね。その前にチケットを手に入れないと! (2019年4月28日 20時) (レス) id: 2ddfe4a912 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - サヤノさん» ありがとうございます。長らく更新していないにも関わらず、このようにコメントをいただけて幸せです (2019年2月5日 20時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
サヤノ - 咲きさん、お元気でしたか? 私は毎日毎日読むのを楽しみながら元気しています…必ず応援してます! (2019年2月4日 15時) (レス) id: 41b29e3ed5 (このIDを非表示/違反報告)
咲き(プロフ) - アル戦ファンさん» わかりました。この章はもうお話がいっぱいなので、次は続編から書きますね (2019年2月1日 23時) (レス) id: 36a679870d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲き | 作成日時:2017年3月11日 21時