大災厄の世界改変物語Ⅲ【HQ】 (ページ14)

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夢⇔第2のはじまりページ14

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一目見ると誰もが二度見するような、広く、大きな、日本では珍しい車

その車に男女が2人

男の装いは一見ただのスーツに見えるが、綺麗な形でシワひとつなく、スマートに着こなしている。

厳しさの中にも垣間見える優しさをもつような表情で前方を見つめ、真面目で優しく丁寧に車を操縦する

なんとも欠点のなさそうな男である

後部座席には物静かに座る女。車内でも足はきちんと揃えられ、手は綺麗に重ねられている

長い睫毛をふわりと動かし、全てを飲み込んでしまいそうな漆黒の瞳を窓の外に向けている

窓から見る眺めは規則正しく一定に流れてゆくが、どこを見ても同じ景色。

そんな山奥へと向かう道。それでもまだ森には入らず視界が良好なところである

心地よい沈黙。その中で男は自然に女に話しかける

「空が曇りなく綺麗ですね、A様。良い旅立ちの日になりました。」

「そうですね。空がこんなに綺麗だとは…。学園にはわくわくしますが、少し不安もあります」

空は青く、透き通っており、どこまでも伸びているかのように思える

だが別段特別な空ではない。それは至って普通の空である

女の不安を表すかのように、どこからともなく雲が流れ、白く大きくたなびいている

…何を不安に思うのか。

「A様のお人柄なら大丈夫ですよ。それに会話の練習をたくさんしましたからね。」

「どうしても敬語が…。ですがそこは学園で学びます。」

「それがよいですね。万が一前のを忘れても、また私がご指導させていただきますのでご安心ください。」

「さすがね」

だんだんと空の雲の量は増え、空を覆いつくす
それに比例し、周りの景色も緑一色になりつつある

いよいよ山奥である

こんな場所に向かうとは、一体なにがあるというのか

「到着いたしました。お荷物はおまとめになられましたか？」

「ええ、大事なものは確認しました。」

「あちらが入り口です。見張りの者に学園長室までの道のりを…」

「さっきも聞いたわ、心配しすぎ。なるようになるわ」

「頼もしくなられましたね…。最後に１つだけ。ちゃんと復習をお忘れなきよう。」

「わかってるわ。」

「それでは。ご多幸をお祈り申し上げております。」

男は深く深くお辞儀をし続け、そして顔を上げる。そこにはすでに女の姿は見当たらない。

男は学園を見つめ、なにやら懐かしさを感じているかのよう。かと思いきや少し悲しげな表情をみせる

「どうか、ご無事で。」