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もしも、へし切り長谷部とこんな話があったなら ページ1

相変わらずここは甘い。
文机の上には書きかけの書類。途中でミミズがのたうち回っている。昨夜も夜遅くまで灯りがついていた。ここのところずっとそうだ。この方が休まる時は……ない。生真面目な主は膨大な量の書類をひとりでさばいている。近侍としては心苦しい。カソックを脱いで主の肩に掛けた。微かに肩が上下している。気持ちよさそうだ。執務室には緩やかな風が吹き込んでいた。外を見れば青々とした葉が木に生い茂っている。初夏だ。透き通るような青い空が眩しい。畳を焼く光は柔らかく温かい。これでは微睡みに沈むのも仕方ないこと。主を起こさないように文机に置かれた硯と筆を遠ざける。これで主が墨に汚れることはあるまい。ホッと一息ついてそこに佇む。あどけない寝顔だった。柳眉は下がり、口はかすかに開いている。普段隙がないだけに貴重だ。思わず笑みが漏れた。

「長谷部」

赤い唇が動く。
その目は閉じられたまま。やましいことは何もしていないが多少決まりが悪かった。

「……主」

「ふふ、やっぱりおまえだったのね。自信はなかったのだけれど」

ゆっくりとその瞳が開かれる。光を受けてか主の虹彩が普段より明るい気がした。引き込まれそうだ。長いまつげがふるりと震える。瞬間、柔く綻んだ目元。視線が離せなかった。それほどまでに美しい微笑。

「仕事をしろと、言いにきたのかしら?」

目線を俺に合わせて、クスクスと悪戯っぽく笑う主に俺は慌てて首を横に振った。

「いえ、主は普段からよく働いていらっしゃるので。……たまには昼寝のひとつくらいしてくださった方が臣下としては安心いたします」

顔が少しあつい。視線をさりげなく主からそらしてその場に腰を下ろした。主は文机から顔をあげて伸びをすると一息ついてふっと笑みを浮かべた。苦笑と表現した方がいいのかもしれない。

「ひどい字ねぇ。もう字と呼ぶのも烏滸がましいくらい。おまえもそう思うでしょう?」

書状に視線を落とす。確かに字の原型はない。途中からにょろにょろと黒い線が綴られているだけだ。

「そう、ですね。主もお疲れなのでしょう。どうか、主。俺に仕事を任せてはいただけないでしょうか」

背後で控えているだけでは意味がない。出陣だけが仕事ではないのだ。

「……私の仕事よ。お前は命を賭して戦っている。私は、そうね。お前達に守られている。お前達がいなければ私の仕事は成り立たない。お前に、長谷部にこれ以上負担はかけられないわ」

・→


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秋音(プロフ) - リリスさん» 返事が遅れてしまい申し訳ありませんでした!はい!時間が大分かかってしまうかと思いますが、書かせていただきたいと思います! (2017年12月29日 0時) (レス) id: b4a58524d0 (このIDを非表示/違反報告)
リリス(プロフ) - リクエスト、いいでしょうか? もしも、明石国行が蛍丸達の事を忘れてしまったら。お願いします! (2017年12月27日 22時) (レス) id: 784ce9f04f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:秋音 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年12月22日 18時

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