記憶 ページ18
紫怨は自分に何が起きているのか、よく分からなかった。
なぜ、自分はこんなに髪飾りを大切にしているのか。
なぜ、あの桔梗の花畑を守ろうとするのか。
なぜ、この黒髪の青年を見たとき、涙が溢れたのか。
これほど大切な何かがあるはずなのに、どうして思い出せないのだろう。
一瞬だけ懐かしさを感じたが、それが何なのかがはっきりと分からない。
あと少しで、思い出せるのに。
もう、義勇に刀を向けられても戦おうとは思わなかった。
義勇は紫怨を見据えたが、彼女は涙を流して座りこんでいるだけだった。
息を深く吸い込むと、刀を紫怨の頚に振り下ろす。
「水の呼吸・伍ノ型……干天の慈雨」
優しく、穏やかな死を与える斬撃が、紫怨に迫る。
刀が頚を斬り落としたその時、紫怨はやっと思い出した。
「………かず、おみ」
「………」
「私の、大切な人……」
人間だった頃の記憶を、全て。
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木春菊(プロフ) - 猫丸さん» 感想ありがとうございます。楽しんで頂けたなら良かったです!他の小説も頑張っていきますね! (2020年8月17日 22時) (レス) id: 53ae1c88c5 (このIDを非表示/違反報告)
猫丸 - とても素晴らしい小説ですね!さらっと読めるのに内容は濃くてとても面白かったです!(なんか食レポみたい?)貴方様の他の小説も読ませて頂きます。他の小説も頑張ってください![長々と失礼しました] (2020年8月17日 18時) (レス) id: b42424beae (このIDを非表示/違反報告)
木春菊(プロフ) - pookyさん» コメントありがとうございます!掛け持ちしているので更新が遅くなりますが、頑張ります! (2020年8月6日 21時) (レス) id: 53ae1c88c5 (このIDを非表示/違反報告)
pooky - 面白そうですね!頑張ってくださいね! (2020年8月6日 19時) (レス) id: 012e567f90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木春菊 | 作成日時:2020年8月4日 23時