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車を停車させて、言われた通りに裏口へ。
『こんばんは―――――義兄さん、お待たせしました。』
奥からひょっこり顔を出した義兄さん。
「呼び出しちゃってごめんね。」
義兄さんの後ろを歩いてお店の最も奥へ。
そこには今まで見たことの姿の彼がいた。
シャツは全体的にヨレていて皺がよっているし、
しばらく見ない間に伸びたであろう髪は、これでもかと言うほどボサボサで。
テーブルに顔を乗せて寝ている横顔は、以前よりも頬がこけた様に見える。
「明日、仕事珍しくオフみたいでさ。
顔が浮腫んでも問題ないって調子こいて結構な量呑んでたから、ちょっと心配。」
義兄さんはさらに、
「そもそも、そんな酒好きじゃないくせにどうしたもんかねぇ。」
と独り言を呟いていた。
―――――明日、仕事オフだったんだ。
「あれ、Aちゃん聞いてなかったの?」
あ、
どうやら実際に声に出して言っていたようだ。
喉元まででかかった"離婚寸前なので"
という言葉を必死に飲み込む。
なんだか決まりが悪くて、
『はい…聞いてなくて。
あ、そうだ。義兄さん、奥さん大丈夫ですか?
あと1時間くらいで日付変わりますよ。』
なんて、
強引に話題を変えるしか私には出来なかった。
「あ、やべ。裏口の戸締まりだけはよろしく。確かコイツのキーケースの中に――――――あ、あった。」
義兄さんの手の中にのっている特殊な形の鍵。
「これ、ちょっとだけコツがいるんだけど……Aちゃんなら多分分かると思う。」
……多分、って。
ちょっと心配だけれど、
『分かりました、お任せ下さい。』と口が動いていた。
「じゃあ、俺帰るね。来てくれて助かった、ありがとね。バイバイ!」
そう言い残して、嵐のように義兄さんは去っていった。
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作者名:ERI | 作成日時:2019年4月29日 22時