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彼に連れられたまま、エレベーターに乗る。
目的の階に到着した音がしてエレベーターの戸が開くと、沢山の人が目に入る。
「ジンさん急いでください。あと2時間です。」という声。
「リーダー、どうしましょう。ジンさん、いつもより浮腫んでます！！」という声。
……ん？
あと2時間？仕事オフなんじゃないの？
「Aさんは、こちらの奥のブースで着替えていただきます。付いてきてください！」
なんで名前を知られているのか、
そして何故私は着替えさせられなければならないのか。
皆目検討もつかないが、目の前の人の剣幕に指示に従わざるを得なかった。
上品なドレスとストッキングを渡され、カーテンが閉められる。
外から「出来るだけ早くお着替えお願いします！」と圧がかけられる。
―――――もう、考えるのをやめよう。
どうにでもなれ。
渡されたドレスに身を包む。
布地にはそんなに詳しくないのだけど、袖を通した瞬間、直感でこれ高いと分かるようなドレスだ。
寸法した訳でも無いのに妙に私の身体のサイズに合うつくりだった。
カーテンを開けると、
踵の低いヒールがまるで"履いてくれ"と言わんばかりに置かれていた。
履き終わった途端に「メイクをします。」と人が入れ替わってきた。
「Aさん、無香料の選択しましたが、それでも気分悪くなったら教えてください。」
私が妊婦であること、匂い悪阻であることを知っているような。
その配慮に身の毛がよだつほどの胸騒ぎがした。
まるで蟻地獄にハマるように、彼の用意していた計略にまんまと陥ってしまったのだ。
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作者名：ERI | 作成日時：2019年4月29日 22時
