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そして迎えた朝。
リビングに行くと、既に浮腫んだ顔をした彼がいた。
――――――今日で、彼との生活も終わる。
最後くらいはいい思い出にしよう。
今までの嫌だったことは今日だけはなかったことにして笑って別れられるように。
そう心に決める。
『おはよう。』
「……はよ。」
彼は料理が得意ということもあって、先に起きた方が朝ごはんを作ることになっていた。
……最後に2人で食卓を囲んだのはいつだっけ。
食卓の上に並んだ、これまでにないくらいの料理の数々。
どれも、私が好きだといった料理ばかりだった。
栄養も偏らないように考えられているメニューだった。
どれも彼は手をつけていないように見える。
私が起きるのを待っていてくれていたようだ。――最後だから。
「『いただきます。』」
食べ物の匂いで少しだけ気分は悪いけれど、折角作ってくれたものを無下にはできない。
時間をかけて、ゆっくり食べることにする。
彼の食べる姿が大好き。それは今でも変わらない。
美味しそうに食べる彼を見ているとつられて食欲が湧いてくるから。
口いっぱいにご飯を頬張る姿や
少し豪快なくらい口を広げてかぶりつく瞬間、
好きなものを口に入れた時に少し揺れる体。
その姿をしっかり心に刻む。
「『ご馳走様でした。』」
完食。
――――と言っても、ほとんどが彼の胃袋に納められたのだけれど。
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作者名:ERI | 作成日時:2019年4月29日 22時