第十二話「糸の繭」 ページ9
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「お城に地下研究施設なんてあったんだね」
「マジでそれな？初めて知ったわ」
研究施設の鍵をくるくると指で回すAを先頭に、彼らは歩いていた。好奇心旺盛ななかむとぶるーくが興味深々できょろきょろと辺りを見渡している。
「なかむたちが来る前、異能力者は異能の定期検査を行っていたらしい。その会場がここだった」
「俺らは外でやったわ」
「この床に書いてあるの魔法陣みたいじゃね？」
「やっべー！何あの薬、変な色！」
会話が次から次へと飛び交うため、全てを聞き取れないきんときは苦笑いをした。そして、自分の少し後ろを歩くシャークんの顔色を伺った。
「さっきからずっと何も喋んないけど大丈夫？」
蒼白な顔。光を宿していない虚ろな緑色の目。
「大丈夫」
そう言って先に行ってしまったシャークんの背中を追いかける。大丈夫だと彼は言ったが、それは大丈夫じゃない人が言うセリフだ。
きんときはなかむに言われた言葉を思い出す。
『君よりも僕らの方が遥かに辛い思いをしてきた。周りから信頼されていた君の方が、まだマシなんだから』
しっかり者で面倒見のいいA。
無邪気で活発で、一緒にいると楽しいなかむ。
ふわふわとした雰囲気でマイペースなぶるーく。
ちょっと天然で誰よりも強いシャークん。
周りをよく見ていて、頼りがいのあるきりやん。
きんときは彼らの過去を何一つ知らなかった。それ故なのか、時々疎外感を感じるときがあった。
第十二話「糸の繭」
kintoki side
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2022年6月29日 22時
