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「そういえば、ぶるーくとは仲良くなれた？」
洗濯物を干しながら、Aは玄関掃除をしてくれているきんときに訊く。彼は数秒考えた後、ほうきを動かす右手と共に愚痴を開いた。
「うん。初めは怖いなって思ってたけど」
「結構ふわふわしてるでしょ。突然ダジャレ言ったり、しょうもないことやり出したり」
「そう！あんなに敵意あったのに、なんで急に…」
Aはあぁと一人心の中で納得する。あいつは負けず嫌いだから、と言えばきんときも一連の出来事を思い出して納得したみたいだった。
実はぶるーくよりも負けず嫌いなのがシャークんである。というか、ここにいる全員はそうなのだ。
そして全員、色んなことをすぐに忘れるため「そんなこと言ったっけ？」なんて言う言葉は日頃から飛び交っている。
今までにあった数々の小さな勝負たちをAは思い返す。それはどれもくだらないものばかりで、面白いものばかりだった。
「本当に一人一人に個性があるよね。Aなんてお母さんみたいだし」
「ははっ、それに比べてきんときはザ・普通だな」
「言い返す言葉がありません」
サッとほうきが風で飛んできた砂ぼこりを一掃する。籠いっぱいに詰まっていた洗濯物も残り僅かとなり、Aは額に滲んだ汗を拭った。
山の近くにどんよりとした濃い灰色の雲が浮かんでいる。午後から雨が降る予報らしく、今日は訓練を中止にすることをAはシャークんから聞かされていた。
「きんときは雨乞いもできるのか？」
「それはさすがに無理だよ。俺の異能はあくまで水龍を操るだけで、水を操るとはちょっと違うんだから」
「龍の形をしてないと操れないってことか」
「うーん、簡単に言うとそうかな」
俺もよく分かってないんだよね、と彼は苦笑いをした。
異能の扱いは先天性の場合、どういう風にしたら使えるのかも異能を授かった瞬間に分かっているらしい。
なかむときりやんは扱い方は分かるが、力の加減が分からなかったと言っていた。現に今でもなかむが苦戦している。
一方、後天性の場合。異能の扱い方も力の加減も全て分からずじまいなのだそうだ。シャークんから聞くと、自分で自分の異能を研究しまくった、と以前に話していた。
Aの話にきんときは相槌を打った。
「俺ももっと頑張らないとね」
「Aくーん！きんさーん！」
自分らの名前を呼ぶ声に二人が後ろを振り返ると、窓からひょっこり顔を出しているぶるーくがいた。
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2022年6月29日 22時
