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Aが任務に旅立ってから数日後のことである。遂に城への突入作戦決行日となった五人は、真っ黒なローブを身にまとっていた。
「そっちは大丈夫そうか？」
「大丈夫。寝てるよ」
現在時刻は早朝、午前四時。この時間帯を彼らが選んだ理由は、なかむが朝に弱いからであった。
同じく朝に弱いぶるーくはというと、後頭部には寝癖がついており、ぼうっとする頭をブンブンと振って何とか意識を保っている状態だ。
「本当に…やるんだね」
「あぁ、無鉄砲な計画だから失敗に終わるのは目に見えてる。でもそれでいい」
Aの無事が確認できれば。あわよくば、国王の顔面を思いっきり殴れるなら。
シャークんを筆頭に五人は朝焼けの中を走った。足に緑色の稲妻を絡ませながら、新鮮な空気を切り裂いて行く。その間に会話は生まれなかった。
いつものように誰かに言われる任務だったら、そんなことは無かったはずだ。
自分達から言い出した国王への反抗心は、次第に緊張を帯び始める。この手の震えは走っているからだと思いたい。シャークんの頬に流れる汗は、風に拐われて行った。
『君は優しいんだね』
頭の中で反響するのは、いつの日かなかむに言われた言葉。涙で汚れていた自分の手を握り、幼い割に達観した笑みでこちらを見つめていた小さい頃の彼。
大切な人に依存していた、昔の自分と今のなかむが重なって苛立ちが積もった。
立ち位置が逆転した今、俺はなかむに何を言えただろうか。
シャークんの背を追いかけるスマイルの横で、きりやんは心配そうな顔で後ろを振り向いていた。彼の視線の先にあるのは豆粒の様に小さくなった自分達の家。
「前見て走れ。転んでも知らないぞ」
「……いや、これでいいんだ」
「おい？きりやん、聞いてんのかよ」
「え、なんか言った？」
風圧とお前の滑舌が悪くて聞こえませーん。
ケラケラとおちゃらけた笑顔で応えるきりやんの脇腹をスマイルが小突く。
突然のことにバランスを崩したきりやんは見事に転倒し、二人の後ろを走っていたきんときとぶるーくが、横たわる彼を反射で飛び越えた。
「おーいスマイル何してんだよ！」
「シャークんストップ〜！スマイルがきりやん転ばせました！」
「は、はあ？」
「わりぃ…」
止まった後続の元へと駆け寄るシャークん。きりやんはというとローブに付いた砂埃を払い、眼鏡をかけ直した。
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年4月5日 17時
