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「大変申し訳ありません！！弁償は」
「ちょっとちょっと！いいよ、大丈夫だよ！命の恩人にお金なんて要求できないよ！！それに、僕の方がお礼しなきゃだし！なんでも言ってよ！」
疲労困憊の身体を引きずりながら、ともさんの自室に入る。眠っているぺいんとを豪華なベッドに寝かせてやり、彼は俺に着替えの服までも用意してくれた。
それ、貰っちゃっていいよ、と笑う彼は、闇市の主催者でありながらも根っからの善人であった。
「それにしも、異能力ってすごいんだね！ぺんちゃん以外の異能力者には初めて会ったよ」
「あ、あの、ぺいんとの存在は国の方に知られているんですか」
「知られていないと思う。ぺんちゃんが自分自身を
「それって、どういう」
これはぺんちゃんから聞いた異能の話なんだけどね。少しだけ襟がよれているワイシャツに袖を通す。ともさんは、カーテンを閉めて、ランプの明かりを灯した。
「あの子の異能は秘密。この館も、異能がかけられているから普通の人には見つけられない。この館に居る間は皆、秘密の存在になるんだよ。だからぺいんとも、僕も、国に見つからないんだ」
「他の人の秘密も分かると聞きましたが」
「うん。目に入った人の秘密が分かるんだけど、大勢の場があの子は苦手で。ローブとか前髪とかでできるだけ視界を狭めてるんだ」
一度に何人もの情報が頭に流れてくるから、脳がショートしやすいのだと彼は言った。
「あの、さっき…お礼のこと」
「何でもいいよ！僕にできることなら」
ぱっと輝かしい彼の笑みが眩しい。今から俺の言うことが彼の好意を汚してしまうかもしれないと思うと、心苦しかった。
部屋に響く時計の針の音と、穏やかな顔で目を閉じるぺいんとの不規則な寝息。
「ぺいんとを借りても良いでしょうか。本当に少しの間だけです」
「…異能目当てだね。君の目的によっては断らせてもらうよ」
長い話になりそうだから、紅茶でも入れようか。
ともさんは静かに立ち上がり、部屋を後にした。俺はベッドの上で布団にすっぽりと身を隠しているぺいんとを見下ろす。
「起きてるんだろ。分かるぞ」
モゾモゾと布団が動き、中から不安げな表情の彼が俺を見つめていた。
「…あんたも、俺のこと道具としてしか見てないんだ」
「そういう訳じゃ！」
自信を持って言えなかった。胎児のように丸くなる彼が、一瞬だけなかむと重なって見えた。
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年4月5日 17時
