【WT】鮮紅の花束 Ⅴ (ページ22)

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第五十二話「シークレット」ページ22

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スティール国、東部。繁華街の細い路地裏を通った先。いくつもの角を順番通りに曲がり、見えない壁にぶつかったら合言葉を唱える。

すると、手は壁を通り抜ける。さっとそこを抜け、小さな茂みに隠れた隠し通路を通れば。

見えただろう、奴らの秘密の館が。

限られた者のみにしかたどり着くことのできない場所。このダークレッドの館では、ありとあらゆるものの売買が行われている。

「…行くか」

Aは赤色の仮面で顔を隠す。怪しげな雰囲気を漂わせている館の扉を開けると、彼の目の前に一つの手が伸ばされた。

白い手袋は、この館に招待されたという証拠を要求している。彼はシュヴァルツ国王の名とともに、この館に入るための合言葉を告げた。

手はすっと引き下がり、高貴なシャンデリアの下でAを出迎えた。

「皆さん、ようこそお越しくださいました！」

黒のローブが赤色のカーペットの上をはためく。ステージの壇上に立っている若い男は、手に持つグラスを高々に上げる。彼はこの闇市の主催者である。

「僕のパーティには限られた者しか入ることができません。故に邪魔者はいない。さあ、存分に価値のある取引を！」

主催者の激励に歓声が上がる。Aは人々の間を掻き分けて行き、主催者の顔を捉えた。

少しだけ幼さの残る顔。業火の様に光を宿す赤眼に赤髪。ぱちり、と彼と目が合ったような気がして、Aは反射的に下を向いた。

「申し遅れましたが、僕の名前は赤髪です。ご自由にお呼びください。目玉のオークションは一時間後の開催となります。それまでどうぞ、ごゆっくりお過ごしください」

闇の対価は、平等に。