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そうして、俺たちはだんだんAのいない生活に慣れていった。
料理はきりやんとぶるーくが担当し、食器洗いや部屋の掃除はきんときとスマイル。ゴミ出しはシャークん、買い出しは俺。といった風に家事を回している。
過度な異能使用が必然になる任務に対して、割に合わない報酬額。昔からAが問題視していたことが、直接俺たちの身に降りかかることが多かった。
勝手に特殊部隊の家の改築が決められて、すぐに工事が始まる。頼んでもいないのに、俺たちが言い出したことでもないのに、その改築費は僕らが支払わなければいけなくなった。
たまに来る任務の報酬金だけでは足りなくなり、自分たちでお菓子を作り、城下町で売ったり、古物を買い取ってもらったりしてなんとかやりとりしていた。
「ありがとうございました」
改築後の家は、以前よりも一回り大きくなっていた。夜間も一日中作業が行われていたため、僕達は何度か野宿を強いられたが、そのおかげで予定よりも随分早く終わった。
「なんか、僕たち良いように使われてない？あの工事の人達、国専属の職人でしょ。なのになんでお金払わなきゃいけないの」
「給料とか？」
「それなら国王が出すはずでしょ？！ほんっとに意味わかんないんですけど！！」
「ジリジリこっちの物をすり減らされてる気がする」
スマイルに皆が頷く中、俺は皆の輪から少し外れたところで様子を見守っていた。
俺たちの国王に対する信頼や希望は欠落しており、皆にとってまだ王の言葉を信じている俺は邪魔だったのだろう。
俺のいない所で、皆はとある計画を立て始めた。
「俺は今でも国王の言葉は信じてるよ。でも、信頼はしてない。これだけは察して欲しかったかなぁ」
通信機のスイッチを切り替える。すると、ノイズの音に聞き慣れたシャークんの声が混じった。彼だけじゃない、他の四人声も次第にはっきりと聞こえるようになる。
本当にやるつもりなのか？
ここまで来て引き下がる訳にはいかないでしょ！
いいか？決行日は約束の一ヶ月を過ぎた五日後だ。
その五日間は国王に対する猶予ってわけね。
A君は僕達の力で取り返す。
団結している彼らの中に、俺は入る気になれなかった。何か嫌な予感がするのだ。誰かの手のひらで踊らされているような、そんな気がしてならない。
「教えてよ、A」
国王は何を企んでいるのか。お前だって、目覚めてるなら調べるはずだから。
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年4月5日 17時
