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「本日をもって特殊部隊世話役制度を廃止する」
Aが異能を継承してから一週間目のこと。国王から告げられた言葉に僕は信じられないでいた。
国王から呼び出しを受けたのは、特殊部隊「White Tails」創設初期からいる僕とぶるーくの二人。突然のことに何も言えないでいると、国王は面倒くさそうにため息を吐いた。
「君たちは今年で、一般人だったらアカデミー卒業の歳になるだろう？もうAに頼るのはやめなさい」
「なぜこのタイミングで」
「丁度いい節目じゃないかい？Aにはぴくとの抜けた穴を補完して欲しいからね」
「Aは、それでいいって言ったんですか？」
異能継承後、Aを一ヶ月預かりたいという王の頼みを僕たちは飲んだ。その結果、あの日から一度もAに関しての事が僕らには伝えられていない。
異能や健康状態についても、目覚めたのかすらも僕らは知らなかった。
「君たちには…いや、彼にはもう君たちは必要ない。覚えているかい？世話役を新たに決める時、君たちに書類審査をお願いしたことを」
「…覚えていますけど」
「彼はもともと騎士団志望だった。軍学校でも首席の実力でね。でも君たちが世話役に選んだことで彼の夢は途絶えた」
「それ、今のA君と何か関係あります？」
俺の隣に立っているぶるーくは、苛立った様子で国王に問う。
「そんな昔話より、なかむの質問に答えてください。A君は世話役を廃止することに賛成したんですか」
「ははっ、そんな態度で私に質問かい？こっちは不敬罪で君たちを処刑することだってできるんだぞ？」
国王は自慢の髭を撫でながら、僕たちを睨む。普段穏やかなぶるーくでも眉間に皺を寄せ、険悪な顔をしていた。
腹の底から沸き上がる怒りを抑えながら、俺は笑顔を取り繕った。
「どんなに権力を持っていようが、国王様でも僕たちの異能には勝てませんよね？」
周りの空気が冷えていく。感情と異能はある程度の繋がりがある。感情をコントロールすることは、異能の制御にも繋がり、またその逆も然り。
「いつまでも僕たちが貴方に従うと思わないでくださいね」
国王の怯えた表情に、怒りがスっと鎮まる。すると、空気も熱を取り戻し始めた。
「上等だ。まあいい、君たちは私よりも先に死ぬ運命だ」
「それ、どういう」
「ぶるーく、いいよ。本日はこれで失礼します」
国王の言葉に噛み付いたぶるーくを制し、彼の手を引っ張って足早に王室を去った。
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年4月5日 17時
