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雷がまるで地面を這っているような、そんな轟音だった。ゴロゴロと地上へ雪崩降りていくコンクリートの欠片が、あの二人を襲う。
「くっそ！！はよ起きろ、ふざけんな！」
小柄な男を背負った尻尾の男は、人間離れした速さで逃げようとする。それを見逃さなかったスマイルは、彼の両足首を糸で縛り上げた。
足がもつれて奴らは転び、スマイルの光の宿る紫の目を見上げる。
「ははっ、助けてぇや」
彼の乾いた笑いは、誰にも届かなかった。どこからか狼のような遠吠えが聞こえる。突然のことに辺りを見回したスマイルは、こちらに向かってくる黒い影を見つけた。
轟音は収まり、辺りには静寂が訪れた。瓦礫の波に敵が飲まれたことを確認するため、なかむはスマイルのもとへと急いだ。
糸の繭の中に身を隠して無事に地上に着地していたスマイルは、酷く青ざめた顔をしている。不思議に思ったなかむが彼の顔を覗き込む。
「大丈夫？」
「あいつら…逃げたかもしれない」
「え、逃げた？そんなの無理だって。スマイルが足止めして、瓦礫に追いつかれたんでしょ？」
「聞こえたんだ、狼の遠吠えが」
先程まで威勢が溢れていたスマイルは、すっかり萎縮しているようだった。なかむが何かを言いかけようとした時、再び遠吠えが聞こえた。
しかし、今度は狼のものでは無かった。聞きなれたその低い声は、きんときの操る水龍のものだ。
二人に黒い影が降りる。上を見上げると、透き通る美しい身体の水龍が二人の頭上に止まっていた。
「きんとき！！」
「乗って、あいつら追いかけるよ！！」
なかむが二人の氷を発生させ、水龍の元まで上がる。そこには疲れきった顔をしたきんときが、作り笑いで二人を待っていた。
「異能の使いすぎなんじゃ…」
「おい、その腕！！」
スマイルはきんときの右腕を指差す。彼の腕は血に塗れており、関節が外れているのかありえない方向に曲がっていた。肩には何かに噛み付かれたような跡があり、肉が見えている。
「大丈夫…だから行くよ」
「大丈夫じゃないよ！」
「俺が今、踏ん張んなきゃダメなんだよ！！解るだろ、なあ？なかむ！」
水龍が大きく唸り声を上げ、加速する。
「狼の異能を持った敵がいた。俺はそいつにやられて逃げられて…なかむたちの方に」
「じゃあ、スマイルが聞いたのは本当だったんだ」
「恐らく、その狼野郎が俺らが戦ってたあの二人を連れて逃げたっぽいな」
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年1月22日 17時
