【WT】鮮紅の花束 IV (ページ44)

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第四十六話「心臓」ページ44

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薄暗い地下研究室。白文字の暗号の中にぴくとは囚われていた。そこから抜け出そうとすると、辺りには黄色の稲妻が駆け巡る。

絶対に逃がすな、という命を受けたきりやんの異能だ。

初めて目にする異様な光景にAが呆然と立ち尽くしていると、カツ、カツと革靴の音が彼に近づいてくる。音の主は静かに彼の右肩に手を置いた。

「君自身の手で殺しなさい」

ゴツゴツとしたその大きな手を振り払うことは許されない。

シュヴァルツ国王はAの目の前に、白銀に光る剣を差し出した。刃に反射して映る自分の顔は、酷く疲れ切っていた。

彼は剣を受け取り、刃先を撫でる。

「A」

名前を呼ばれ、彼が振り返った先にはなかむがいた。部屋の片隅でこちらの様子を見守っている。

暗闇から覗く水色の目がやけに光って見えた。

「独りじゃないよ」

その言葉に彼は頷かなかった。刃の冷たさが彼の指先の温もりを奪っていく。

＿＿＿覚えておいて。君たちの国王は何かを企んでいる。

そしてそれが、私達異能力者の命を脅かすってこと。

Aは国王の顔をバレないようにちらりと見やる。

自分の側近であった者が死ぬというのに、王の目がどこか嬉しそうに見えたのは気のせいなのだろうか。