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「なーにやってくれてんだ、あいつ」
さすがに様子を見に行った方が良いだろうか。短時間で何してくれてんだ、という怒りが込み上げてくる。騒音問題で何か言われたら最悪なのだ。
急いで玄関へと向かい、靴を履く。
「A！」
「シャークんは残ってても大丈夫」
すぐ戻ってくるよ、と言い残しドアを開ける。そのまま走っていこうとした時、服の袖を後ろに引っ張られた。よろめきながら後ろに目を向けると、何か言いたげな顔をして彼が立っている。
「Aは、見ず知らずの人を殺せるでしょ」
「そりゃあ…一応軍人だし」
「じゃあ、お世話になった人は殺せる？」
様子がおかしい。今ここで彼を置いて皆のところへ行くのも、違うような気がしてならない。頭の中に浮かぶ行動の選択肢が揺れ動いている。
何かを訴えているような。そんな彼の瞳から目が離せなくなっていた。彼の手の震えが微かに伝わってくる。
「うわ、本当にAが来るとこだったな」
「だから言ったでしょ〜？」
立ち止まっていると、騒ぎの元凶であるなかむときんときが水龍に乗って現れた。シャークんは俺の袖を掴んでいた手をぱっと離し、顔を背けている。
「出て行ってすぐに何してくれてんの」
「ごめん！きりやんの異能でいろいろ実験してたらさぁ、雷みたいなのができちゃって」
「火災になりかけたけど消化できたから大丈夫」
「バカ。自然発火したらどうする気だったんだ」
風に運ばれてきた焦げ臭さに鼻を摘まむ。どうやら話はそれだけではないようで、水龍から降りたなかむは俺の耳に顔を近づけた。
「シャケとなんか話した？」
「なんだよ」
「その、ね。Aが寝ている間にぴくとさんと俺ら、色々あったんだよ」
顔を話すと、にっこりと笑って「夕方には帰るから」と二人は颯爽と飛んでいく。わざわざ俺に報告しに来てくれてご苦労であるが、そもそも問題になりそうな実験は控えてほしいものだ。
「シャークんの質問だけど」
話が戻ると思っていなかったのか、シャークんは不意を突かれたように目を見開く。
「多分、俺には殺せない」
「そっか…そうだよな」
はああああ、と深く息を吐きながら彼は膝を折る。彼に合わせて俺もしゃがむと、突然両肩を掴まれ、勢いに押されて尻もちをついた。
「お前には俺みたいになってほしくない！」
「は、はあ？何言って」
この時、俺には彼の言葉の意味が分からなかった。
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年1月22日 17時
