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病院から僕らの家までの帰り道。先を行く四人の少し後ろで、僕は意図的にぶるーくと二人になった。
「最後さ、ぴくとさんに何て言ってたの？」
「ありがとうございましたって言っただけだよーん」
首の後ろで手を組みながら、呑気な声で彼は続けた。
「あの人の目、本当に死のうとしてる人の目だった。いつもとなんか雰囲気が違かったし」
「ねぇ、なかむ」そう僕を呼びかける彼は、少しだけ歩くスピードを早めた。そしてこちらを振り返ると、屈託のない笑顔で言うのだった。
「僕のこと見つけてくれてありがとう」
灯りのついていない家に帰ってきた。口々に疲れた、とか眠いだとか言いながら靴を脱いで手を洗う。リビングの電気を付けるが、暗がりの中からAの姿が現れることはなかった。
いつになったら起きるかな。
Aに触れていたから分かるが、彼の身体はとても熱かった。倒れたのはまたらっだぁさんの異能の仕業かとも思ったが、青薔薇は出てこなかった。
きりやんとぶるーくが夕飯の支度を始める。シャークんが先に風呂に入りに行き、きんときは床に寝転がって、ソファにはスマイルが座った。
「きんとき〜」
「なに」
僕はしゃがんできんときの脇腹をつつく。彼はくすぐったいと身を捩らせた。
「継承って、どんなの」
「うーん…あんまり思い出したくないんだけどさ」
微かに笑って、何かを思い出しているように彼は天井の一点を見つめている。誰かの過去に自ら足を踏み入れるのは、スマイル以来かもしれない。
きんときはよいっと身体を起こしてあぐらをかいた。
「簡単に言えば、心臓を食べるんだよ」
「え…食べる？」
「そう。俺もどうしてかは分からない」
自分の心臓部を指さして彼は言う。僕らの話を聞いていたらしいスマイルは、ふーんと興味なさげな反応を示した。
「あのなぁ、スマイル。そんな薄い反応してるけど、実際に見たら吐き気止まんなくなるよ？」
「逆に聞くが、なんで心臓なんだ？」
「俺も分かんないの。話聞いてなかったな、お前」
「いやいやいや、俺は話が聞こえちゃっただけだし」
「言ってることは正当なんだろうけどうざい」
コトン、とテーブルに焼き鳥が数本積まれたお皿が乗る。エプロンの紐を結び直しながら、きりやんは僕らを見下ろしていた。
「餌だ」
「いただきまーす！」
「あ、バカ！」
「いただきます」
「僕にも一本ちょ〜だい！」
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年1月22日 17時
