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「うるせー黙れ。実質大臣。俺の感情に指図すんな！」
金属のような重々しく甲高い音が辺りに響く。その音が近づいてくることを察したなかむが、捕虜たちを守るように大きな氷の球体で彼らを閉じこめた。
「何か来るぞ！スマイル」
「クソ…こんなとこにいられっかよ！！」
目に見える空気の振動がさらに近づく。大きくなっていく金切りの音に二人は思はず耳を塞いだ。
キィィィィィンッ
普通の人間にこんなことできるはずがない。歯を食いしばりながらなかむは目を開ける。水色の目に映ったのは、顔の見えない小柄な男。
「…あいつが！」
氷の球体が割れると同時に、地震のような振動が人々を襲う。すぐさまスマイルが捕虜の人々を糸で捕まえ、安全な場所へと送り届けた。
「いやぁ…あんさん、調子どうですか」
パチン、と男が手を叩く。すると、白い波のようなものがこちらに猛スピードで向かってくる。反射で波を飛び越えた二人は同時に男へ攻撃を仕掛けた。
なかむは鋭い氷柱を放ち、スマイルは何本もの糸を伸ばす。男は紙のような面で自身の顔を隠すと、二人の攻撃を異能で相殺した。
「残念やけど、僕は君らを殺すことが許されてへんのや。だから死なんといてくださいね」
「飛べ、スマイル！！」
なかむのかけ声と同時に飛び上がる。二人の足元を通り過ぎて行ったのは、先程と同じ波ではなかった。一瞬で視界を抜けていった朱色のあれ。
後ろを振り返ったスマイルが目に捉えたのは、人間が失ったはずの"尻尾"を生やした男だった。
「あーあ、何外しとん」
「うっせ。お前がもっと気ぃ引けばええだけや」
背中からシャベルを抜き取った男は、なかむにそれを振りかざす。危機一髪のところでスマイルはシャベルに糸を巻き付け動きを封じた。
「ヴィーア帝国の異能力者だな」
「見ればわかるやろ！ぶっちゃけ、同族同士争うんは嫌なんすけどね！！」
なかむは再び氷の剣を生み出し、真っ白な息を吐き出す。
「俺らの任務は君達
「分かるわけない…！」
なかむとスマイルは、六人の中で下位である。なかむは異能操作の精密性が圧倒的に足りず、スマイルは攻撃力が最も低い。
「君らが弱いからやない。総統の作戦において頭が冴える君ら二人が邪魔やからや」
「Aは…」
「その名前の人は死んでるで、きっと」
冷淡な男の声に、なかむの感情は泥船に乗っかった。
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年1月22日 17時
