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「あ、いたいた！おーい！」
スマイルの糸を頼りにやってきたシャークんときんときと合流する。
かなり重体であったきんときの怪我の傷は塞がっていて、顔色もすっかり良くなっていた。その一方、異能を酷使したシャークんは疲れ切っており、彼の肩に寄りかかるようにして歩いていた。
「A、無事で良かったよ…！」
「お前らのおかげ。ありがと」
「ぶるっくときりやんは？」
「今、スマイルが捜してくれてる」
近くの大岩に腰を下ろし、あぐらをかいて静かに目を閉じるスマイル。彼の指先からは何本もの糸が伸びており、様々な方角に向かって伸び続けている。
こうすることで、一気に広範囲の捜索が可能になったのだ。彼の異能にはまだまだ応用が効きそうである。
「右手、どうすんだ」
シャークんに尋ねられ、俺はまだ痛む右腕を上げて見せた。俺の手はその先端に付いていない。けれど、確かに指を動かしているような感覚がするので不思議だ。
「俺は大丈夫」
「見つけた！きりやんとぶるーくだ！」
ピンと張っている糸を手繰り寄せるスマイルは、それを耳元に当てている。どうやら糸が声の振動を伝えているらしい。糸電話と同じ原理である。
「巻けたか？んじゃ、引っ張んぞ！」
「きんとき手伝え」この場で唯一回復しているきんときが呼ばれ、二人して黄色の糸をぐっと引っ張り続けた。
ザザザと遠くの方から何かが擦れている音がする。その音が近づいてくると共に、何やら騒がしい叫び声が響き渡った。
「わー！！」
「首を絞めるなｱﾞｱﾞ！！」
引っ張られた糸の先にくっついてきたのは、青白い顔をしたきりやんと、そんな彼に背負われているぶるーくだ。彼らの怪我は、離れている間に何があったのかを物語っている。
俺らと合流するなりドサッと倒れ込んだきりやんは、安心したのか長くて深いため息を漏らした。
「シャークんさ、ぶるーくの怪我診てやってくんない？」
「部位による」
「お腹にナイフ刺されたの〜ウケる！！」
「は、はあ？！さっさと見せろ！」
「きゃー！！」
本当に怪我人なのか疑うほど、ぶるーくはハイテンションだった。彼の手には幾つもの切り傷がある。そして、刺されたという腹部を診るために、シャークんは彼の服を捲り上げた。
程よい筋肉が付いている腹部には、刃渡り六センチほどのナイフで刺された傷があった。
しかし傷口は開いておらず、厚いかさぶたに覆われていた。
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年1月22日 17時
