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「そろそろ着くよ、激戦区」
きんときの一言で彼らは静まった。下を見ると、何台もの戦車が移動しており、捕虜された国民たちが拘束されていた。
「俺を見ろ、なかむ！！」
「…会えなくなる。それだけは嫌なんだよ」
「あいつらはそう簡単に殺されるような奴らじゃないだろ。Aにはシャークんがいる」
きりやんの眩しい瞳になかむは落ち着きを取り戻した。再び小さくごめんと呟いた彼は、真下を見下ろす。彼の目に映る景色が脳内で文字に起こされていく。
「スマイル、行くぞ」
「え、はっ…ちょっと！！」
なかむは水龍の背中をさっと撫でた後、仄かに光る地上へと身を投げ出した。名前を呼ばれたスマイルも彼に続く。
手のひらに付いた水滴から氷を生み出し、剣を生成させる。
「まずは僕らで捕虜を解放する！スマイルは敵兵の捕獲優先、俺は戦車を不能にするから」
「了解」
重力に逆らうことなく落ちていく二人に向けて、きんときは小龍を飛ばす。ぶるーくは自身の左手にナイフで傷を作った。
「俺とぶるーくが降りるのは、二人が降りた場所の対角線上にあるあの建物」
「あそこだけ綺麗に残ってるね」
「占拠したんじゃない？人質がいる可能性があるから、慎重に行くぞ」
きんときが放った小龍がスマイルの足元に付く。
「なかむ、着地は？」
「僕なら大丈夫！」
なかむは剣を大きく振り上げ、地上に目の前に迫る戦車へと振り下ろした。戦車を半壊させた剣は折れるも、なかむはさらに氷を生み出し、操縦員もろとも戦車を氷漬けにする。
一方、スマイルは捕虜を仕切っていた敵兵達を糸で掴み、宙へ吊るしあげる。小龍である程度の高さまで再び上がり、そして糸を解いた。
「なんだァ、これ！！」
「うわあああ！！異能力者だ！！」
空中に吊り上げられた敵兵は真っ逆さまに落ちていき、地面と強く衝突した。
「きゃあああ！」
「異能力者様、ありがとうございます！！」
ボロボロの身体で自分に感謝する捕虜達に、スマイルは小さく頭を下げる。彼の横に駆け寄ってきたなかむとハイタッチを交わした。
「第一目標クリア！」
「喜ぶ前に、お前は感情的になるところを直せ。そのせいでこっちは何度も迷惑してんだ」
「…善処するよ。でも、それがある意味一種の才能だとしたら。スマイルは僕の才能を摘む事になるよ」
「そんなくどい言い回しするくらいなら、はっきり言えばいいだろ」
「うん。そうだね」
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作者名：葡萄。 | 作成日時：2023年1月22日 17時
