【WT】鮮紅の花束 IV (ページ17)

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第三十九話「生命線」ページ17

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「はぁ…やっと瀕死か？」

冷やされていた空気が、だんだんと暖かくなっていくのを肌で感じる。人型になった敵は、冷蔵された生肉のように冷たくなったなかむの胸倉を掴んだ。

微かに呼吸音がしている。これで任務完了だ。満足気にニヒヒと笑みを零して、人狼はなかむを放り投げた。久しぶりに楽しい玩具に出会えた。

「おもろかったで。また次も遊んでぇや」

上機嫌に鼻歌を歌いながら、人狼は去っていく。泥に塗れた靴は軽快に足踏みをしており、戦時中だなんて嘘のように弾んでいた。

そんな彼の後ろで、小さな氷の礫が針のように鋭く変形する。

なかむは薄く目を開けて、白く霞む視界の中で緑色の敵の背中を捉えていた。ふうっと白い息を全て吐き切る。

「全…解放！！」

百パーセントの力を最後に使って。

刃物のようにするどい氷柱が、人狼の背中に突き刺さった。背中から貫通して胃を貫き、腹部に現れた冷たいそれを見て、敵は大きく目を見開いた。

アイツ、まだこんな力が…！

「クッソ！！」

「喰え！！」

剣山のような氷の針山が、人狼の身体に突き刺さる。赤い血が自分の中から滴り落ちていくのを彼はただ呆然と見ていることしかできなかった。

そして氷は敵を丸呑みにした。

あの日、なかむがAを凍らせた時のように。