【WT】鮮紅の花束 IV (ページ13)

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第三十八話「喰え」ページ13

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シャークんは、スマイルが残していた糸をたどってきんときの元へと行き着いた。空中に浮かぶ氷に飛び乗り、彼の傷の具合に目を見開いた。

大きくて深い噛み跡。骨は見えていないが肉が抉れている。肘の関節がありえない方向に曲がっていて、とても痛々しい。

「きんとき！」

彼の傷口に手をかざす。バチバチとシャークんの右腕に緑色の稲妻が走る。同じようにきんときの怪我した腕にも、稲妻が走った。

微かな痺れに瞼を開けるきんときは、自分よりも苦しそうな顔をしているシャークんに笑いかける。

「俺がもっと早く来てたら…いや、飛び降りる以外の行動ができてたら、きんときは！」

「いいって。来てくれてありがとう」

「くっそ…！！」

あの頃と何も変わってない。

シャークんの感情は異能の糧となる。向上させたきんときの治癒力は、目まぐるしい速さで傷を修復していく。

「シャークんは、何をそんなに苦しんで」

「お前には分かんねーよ。俺以外、誰にも」

傷が完全に塞がる。最後にシャークんがきんときの肘を勢いよく捻らせ関節を戻した。

「い"っ〜！たすぎなんですけど！！」

痛みに悶えるきんときは顔色も良くなっていた。感情の昂りにより異能を普段よりも強めに発動してしまったためか、シャークんの右腕は麻痺し始めていた。

「皆の加勢に」

元気になったきんときが言いかけた時だ。

一瞬にして氷が木々を食らう。さっと冷気が辺りを駆け抜けて行った。