第十九話 ページ19
「Aさん、そのニヤニヤした笑いはやめてください。時透くんが来たら引かれますよ。」
「え、そんなにニヤニヤしてた?」
ニヤニヤって言い方に悪意を感じる。
でも仕方ないじゃん。ずっと楽しみにしてたんだし、昨日はドキドキし過ぎて夜も眠れなかったし。
今だって騒いでないと暴れ出しそうなんだよ。
「私この状況で落ち着いていられるほど大人じゃないんです。」
「それはそうですね。」
「そこは否定してくれない??」
いつも通りの辛辣さに、私の緊張を和らげようとしてくれる優しさが垣間見える。
大丈夫だと背中を押すように笑いかけられて、私はきゅっと拳を握りしめた。
今日は、言えるだろうか。
無一郎くんに、自分の想い全てを。
「無一郎、くん。」
確認するように、ふと呟いてみる。
声にするだけで、熱を帯びる。想いが募る。
身体の奥が震えるように熱くて、きつく握っていた拳をそっと解いた。
「無一郎くん。好き………。」
「Aお待たせ。」
「ぃひゃいっ!!」
突然後ろから声をかけられて、声が裏返る。
無一郎くんだった。
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作者名:夢見草 | 作成日時:2021年3月1日 20時