第十四話 ページ14
一目惚れとは違う、ずっと昔、出会う前から好きだったような。
そんな感覚。
「無一郎くんが泣いてて、私もわけのわからないままなのに涙が出て。もしかしたら運命とか、本当にあるのかなって。」
そう思った。
「なんて、おかしいと思われるかもしれないんですけど、」
そう言い終わる前に、私は蜜璃さんに飛び付かれた。
「そんなことないよぉ! わああああああん!」
急に抱きしめられて何事かと思っていると、蜜璃さんが大泣きしていた。
かわいい顔をぐしゃぐしゃにして、声を上げて泣いている。
「おかしくなんてない、素敵な話だったわAちゃん!」
「そうですね。」
ふと見れば、しのぶさんと宇髄先生まで優しい顔をしていた。
いつになくやわらかな眼差しに見つめられる。
しのぶさんに、ゆっくり頭を撫でられた。
「初めて出会ったはずなのに、以前から知っているように感じることがある。どこかでそんな噂を聞いたことがあります。おかしいことなんて一つもないですよ。」
ねぇ、宇髄先生? と同意を求めるように、しのぶさんが宇髄先生を見る。
それを受けて、宇髄先生も笑った。
「ああ、ド派手に感動したぜ。」
しのぶさんの時とは打ってかわって、力強い大きな手で頭を撫でられる。
心地よい静寂が、その場に降りた。
皆の優しさがあたたかくて、日の光に包まれているような気さえした。
15人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夢見草 | 作成日時:2021年3月1日 20時